試験研究の「単なる製品のデザインの考案」を明確化

 研究開発税制が2023年度税制改正において見直された中で、新たなサービス開発を促すため、既存のビッグデータを活用する場合も同税制の対象とする一方で、性能向上を目的としない「デザインの設計・試作」は税制の対象外とされた。これを受けた租税特別措置法通達では、試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度について、その対象となる試験研究に含まれないものの範囲を例示している。

 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度については、2022年12月23日に閣議決定された「2023年度税制改正の大綱」において、「試験研究費の範囲から、性能向上を目的としないことが明らかな開発業務の一部として考案されるデザインに基づき行う設計及び試作に要する費用を除外する」とされたことを受け、試験研究に含まれないものの範囲を例示している同通達において、その設計及び試作を追加する改正を行っている。

 改正前の措置法通達においては、試験研究に含まれないものとして「単なる製品のデザインの考案」が例示されていたが、その範囲が必ずしも明確ではなかった。既存の製品の性能向上を伴うモデルチェンジに際して、デザインを流行に合わせて変更することはよくあることだが、この一連のモデルチェンジの中で行われるデザインの考案について試験研究となるのかどうかは明らかではなかった。

 一方、特に性能向上を伴わない製品のデザインの考案であっても、そのデザインに基づいて製品化する段階において、そのデザインを実現するために要する技術の開発には試験研究の要素があり得るとされていた。このため、改正通達において、これまでの「単なる製品のデザインの考案」とは、性能向上を目的としないことが明らかな開発業務の一部として行うデザインの考案であることを明確化した。

 また、同改正通達において、そのデザインに基づき行う設計又は試作は試験研究とならないことを新たに明らかにすることとした。したがって、性能向上を伴う製品開発の一環で行うデザインの考案は試験研究となる一方、性能向上を目的としない製品開発の一環で行われるものは、デザインの考案だけでなくその後の製品化の段階で要する技術の開発についても試験研究とならない、ということとなる。

 「性能向上を目的としないことが明らか」であるかどうかは、例えば、研究開発のプロジェクトなど、一連の開発業務の単位で判断する。例えば、新たな自動車の開発というプロジェクトを立ち上げる場合、通常、自動車の開発過程では、燃費効率、排出ガスの削減、車体の安全性や制御装置の正確さ等、複数の性能向上の要素が含まれるが、そのプロジェクト内においていずれかの要素につき性能向上を求めるものであればよいと考えられている。