ビッグモーターやジャニーズ事務所など、企業が絡むコンプライアンスに関する問題が相次いで表面化した。東京商工リサーチが発表した「コンプライアンスに関するアンケート調査」結果(有効回答数5175社)によると、取引先のコンプラ違反が判明した際、「取引の打切りや縮小を検討する」との回答が32.4%に達した。3社に1社が取引中止を含む対応を検討するとし、コンプラ違反に対する社会の視線はますます厳しくなっている。
コンプライアンス遵守に向け、何らかの取組みを「行っている」企業は80.3%と8割を超えた。取組み内容では、最多は「社内規則、業務マニュアル・ガイドラインの改訂」の50.0%だった。次いで、「社内研修の開催やe-ラーニング受講環境の整備」29.3%、「社内通報窓口の設置」27.6%、「従業員への定期的なヒアリング」27.3%の順。「特に取り組んでいない」は19.6%だった。
規模別では、「取り組んでいる」は大企業が96.3%に対し、中小企業では77.8%と8割を下回り、18.5ポイントの差がついた。取組み内容では、「社内通報窓口の設置」が大企業で66.1%に対し、中小企業では21.6%にとどまった。2020年6月施行の改正公益通報者保護法により、法人には内部通報制度の整備が義務付けられた。従業員300人未満は努力義務だが、人的リソースの少ない中小企業は対応が遅れ、適切な運用が難しい可能性がある。
取引先でコンプライアンス違反が発覚した場合の対応は、「法令に違反していなくても自社の企業倫理や社会通念に反していたら、取引の打ち切りや縮小を検討」が22.8%、「法令(法律や条例など)に違反している場合のみ、取引の打ち切りや縮小を検討」が9.5%で、コンプラ違反企業との「取引の打ち切りや縮小を検討する」企業は合計32.4%。3割の企業が、コンプラ違反企業との取引方針に何らかの基準を定めていることが分かった。
コンプライアンス違反企業への対応方針について、業種別にみると、「取引の打切りや縮小を検討する」との回答では、最多は「自動車整備業」の56.0%だった。ビッグモーター問題が業界全体に影響し、早急な信頼回復に向けてコンプラ違反への毅然とした対応を進めている企業が多いとみられる。以下、「不動産取引業」の54.0%、「保険業」と「電気業」の50.0%と続く。営業に関する許認可や免許、登録などが必要な業種が上位を占めた。
同調査結果は