確定給付企業年金に係る事業主と使用人の課税関係

 確定給付企業年金は、現在日本で最も多く利用されている企業年金制度で、2021年3月末の時点で約933万人が加入している。確定給付企業年金は、2002年4月に施行された確定給付企業年金法に基づき実施される企業年金だ。会社が拠出・運用・管理・給付までの責任を負う「確定給付」型の企業年金制度であり、勤労者の老後の年金給付を実現するうえでも大きな役割を果たしている。

 そこで、退職した使用人を受給者として年金給付を行うため、事業主が支出する掛金および使用人が受け取る給付額の税務上の取扱いをみてみると、まず、事業主が支出した次に掲げる掛金の額は、事業主の法人税または所得税の課税所得の計算上、損金の額または必要経費に算入される。また、使用人については、事業主が掛金を支出した時点では給与として課税されない。

 上記に言う事業主が支出した掛金は、(1)独立行政法人勤労者退職金共済機構または所得税法施行令第74条第5項に規定する特定退職金共済団体が行う退職金共済制度に係る掛金、(2)確定給付企業年金法第3条第1項に規定する確定給付企業年金に係る規約に基づいて支出した掛金、(3)確定拠出年金法に規定する企業型年金規約に基づいて企業型年金加入者のために支出した事業主掛金だ。

 なお、掛金の一部を使用人が負担した場合には、使用人において、(2)の掛金は生命保険料控除の対象、(3)の企業型年金規約に基づく加入者掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象となる。次に、使用人が退職に伴って受け取る退職年金等については、退職年金として給付されたものは公的年金等に該当し、雑所得として、また、退職一時金として給付されたものはみなし退職手当等に該当し、退職所得として課税される。

 また、信託銀行等に積み立てられている退職年金等積立金に対しては、原則として、毎年1パーセントの税率で法人税が課税される。ただし、1999年4月1日から2023年3月31日までの間に開始する事業年度の退職年金等積立金に対しては、法人税を課さないこととされている。