東京商工リサーチが発表した「2023年1~9月の粉飾決算倒産動向調査」結果によると、 同期間の「コンプライアンス違反」倒産は、96件(前年同期比39.1%増)発生し、すでに2022年の年間件数に並んだ。このうち、「粉飾決算」による倒産は6件(同▲33.3%)と減少しているが、負債総額は558億1100万円(同76.3%増)と逆に大幅に増加した。これは粉飾決算に手を染める企業の発覚が中堅クラスにまで広がっていることを示している。
粉飾決算を原因とする倒産は、2019年には21件発生したが、2020年以降はコロナ禍で減少傾向が続いた。しかし、2023年はベアリング販売の堀正工業(株)(東京都、負債350億円、6月取引停止、その後破産)や医療機器製造卸の白井松器械(株)(大阪府、同86億9,600万円、9月民事再生法)、産業用機械製造の(株)トガシ技研(山形県、同56億円、2月民事再生法)など、中堅企業の粉飾倒産が相次いだ。
堀正工業は債務超過を偽り、最大54行の金融機関ごとに異なる決算書を作成する大がかりな粉飾決算で資金を調達していた。白井松器械は20年以上もの間、堀正工業とは正反対に大胆な操作で粉飾決算を続けていた。最近発覚する粉飾決算の特徴は、(1)長期間(10年以上)、(2)10行以上の多数の金融機関と取引、(3)業界内の評価を利用した優良企業との錯誤、などが挙げられる。
2023年1~9月の「粉飾決算」倒産は6件(前年同期比▲33.3%減)で、コロナ禍前の水準から大幅に減少している。形態別では、「破産」が3件、「民事再生法」が2件、「銀行取引停止処分」が1件。粉飾決算は信用失墜で再建が難しくなりやすいが、民事再生法を申請したトガシ技研はスポンサー支援で事業譲渡による再生計画が認可された。都道府県別では、「大阪府」が2件で最多、「東京都」、「山形県」、「福岡県」、「新潟県」が各1件だった。
コロナ禍を挟んだ10年間の「コンプライアンス違反」倒産のピークは、2018年の224件だった。2019年は157件に減少、コロナ禍の2020年は112件で、2021年から2022年は100件を下回った。ただ、2023年は「税金関連」と「不正受給」が増加に転じ、3年ぶりに100件超が確実になった。2023年1~9月の「コンプライアンス違反」の内訳は、トップが「税金関連」の33件で、次いで、「不正受給」が15件、「粉飾決算」は6件だった。
2023年の「コンプライアンス違反」倒産では、「不正受給」の増加が注目される。コロナ禍での雇用維持のため雇用調整助成金の特例法が施行されたが、悪質な不正受給企業として677社が公表されており、今後の動向が注目されている。
同調査結果は