表題は第一生命経済研究所が発表したレポートである。それによると、過去1年間の移動平均値のエンゲル係数(家計消費支出に占める食料費の割合)が2000 年以降で過去最高で並んでいる。総務省「家計調査」の全世帯ベース(2人以上世帯)では、2022年9月~2023年8月までの12ヵ月間累計のエンゲル係数29.0%になった。この数字は、過去最高の2021年1月、2月(過去12ヵ月累計)の29.0%とも並んでいる。
理由は、食料品価格が、消費者物価の中で目立って上昇していることにある。消費者物価の食料品(含む生鮮食品)の上昇率は、2021年以降上昇し、現在もその勢いは衰えそうにない。岸田首相は、経済対策5本柱で、物価上昇の負担増に何とか支援の手を差し伸べようとしているが、エネルギー(電気ガス代、その他光熱、自動車関係費)にはいくらか効果を及ぼせたとしても、食料品のほうには影響力を十分に行使できていない。
では、どういった世帯が、特に負担感が大きいのか。2022暦年の家計調査から、世帯属性を調べてみたところ、70歳以上の高齢者世帯と低所得層のところで、負担感が高くなっている。食料費は必需的な品目だから、食料費が高騰したとき、支出を切り詰めようとしても限界がある。特に、年金生活者(無職世帯)にとっては、なかなか食料費が切り詰められない分、価格上昇が大きなストレスになっていると考えられている。
エンゲル係数の内訳ではどんな種類の食料費が増えているのか。家計調査の支出金額(名目値)を過去10年間で比較してみたところ、食料費は、10年間比で15.1%増加していた。増えているものを挙げると、(1)調理食品42.7%、(2)飲料28.1%、(3)肉類26.3%、(4)乳卵類25.0%、(5)菓子類25.0%、(6)油脂・調味料18.1%が目立っている。それらを特徴づけると、「肉食化」、「間食化」、「中食化」の3つになるだろう。
エンゲル係数が高まる背景には、食料品価格の高騰がある。例えば、10年前比較では、消費者物価(帰属家賃を除く総合)は13.1%も高騰した(消費者物価・総合は10.8%)。名目・消費支出の増加は同期間2.0%なので、実質消費は▲11.0%になる。同じように、食料品の価格上昇は10年間で25.3%だった。実質食料品(数量)は▲10.2%になる。食料品も他の品目も同程度に減らされている。
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