脱炭素社会、企業に「プラスの影響」は14.1%

 環境省と国立環境研究所が今年4月に発表した「2021年度の温室効果ガス排出・吸収量」は、2020年度比で2.0%増加したものの、2013年度比では20.3%減少し、一定の進捗がみられる。帝国データバンクが発表した「“脱炭素社会”の企業への影響調査」結果(有効回答数1万1265社)によると、脱炭素社会の進展が今後、自社の事業に与える影響については、「プラスの影響」があるとした企業は14.1%だった。

 過去に実施した同様の調査から進展はなかった(2021年:14.8%、2022年:14.0%)。他方、「マイナスの影響」とした企業は17.3%で、2022年(19.5%)からは2.2ポイント低下したが、「プラスの影響」がある企業を3.2ポイント上回った。なお、「影響はない」(33.8%)、「分からない」(34.9%)が合わせて7割近くを占め、脱炭素社会の進展に実感が乏しい状況といえる。

 脱炭素社会の進展により「プラスの影響」があるとした企業を主な業種別に分析すると、「再生資源卸売」が29.4%で最も高かった。次いで、「農・林・水産」(25.2%)、「家電・情報機器小売」(25.0%)、「パルプ・紙・紙加工品製造」(22.0%)が続いた。「マイナスの影響」では、ガソリンスタンドなどを含む「専門商品小売」が49.8%で最も高く、全体(17.3%)を32.5ポイント上回った。

 次いで、「輸送用機械・器具製造」(38.1%)、「自動車・同部品小売」(36.9%)、「運輸・倉庫」(33.0%)が続き、自動車関連業種での「マイナスの影響」が目立った。企業からは、「大打撃、致命傷になるが、世の中全体を考えたら脱炭素化は重要課題だと思う」(ガソリンスタンド、栃木県)といった、「マイナスの影響」を感じつつも取り組まなければならないと考えている意見も聞かれた。

 従業員数別にみると、「1000人超」で「プラスの影響」が35.0%を占め、規模が大きくなるほど「プラスの影響」が高くなった。他方、規模が小さくなるほど「影響はない」、「分からない」の割合が高まる傾向がみられた。とりわけ規模の小さな企業からは、「取引先から対応を迫られたらやるが、現在は予定なし」(不動産、大阪府)といった声や、「零細企業には難しい問題ばかりだ」(飲食料品卸売、東京都)といった声が聞かれた。

 同調査結果はhttps://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p230910.pdf