メインバンク取引社数の増加率はネット銀が上位に

 東京商工リサーチが発表した「2023年企業のメインバンク調査」では、取引社数が前年より増えた増加率ランキングは、1位「住信SBIネット銀行」(39.1%増)、2位「楽天銀行」(15.2%増)、3位「PayPay銀行」(14.5%増)と、ネット銀行が上位を席巻した。ネット銀行は、アプリなど利便性の高さや送金などの手数料の安さ、口座開設スピード、簡単な融資審査などを強みに、取引社数が急ピッチで増えている。

 ネット銀行に次ぐ増加率は、地域に根ざす信用金庫が並ぶ。4位「島田掛川信金」、5位「滋賀中央信金」と続き、上位30のうち、24行を占めた。コロナ禍で経営が悪化した中小企業に寄り添った支援活動が結実したといえる。調査は、東京商工リサーチが保有する156万8602社の企業データバンクから企業のメインバンクを抽出、メイン取引社数500社以上を集計したもの。1位から3位までネット銀行が独占した。

 増加率トップの「住信SBIネット銀行」はメイン取引社数842社(前年605社)、増加率39.1%と大幅に伸ばした。2位の「楽天銀行」は1607社(同1394社)で、増加率は15.2%と安定して伸長。3位の「PayPay銀行」も1453社(同1268社)で、増加率14.5%と二桁成長を維持。なお、抽出条件の取引先数500社以上には届かないが、「GMOあおぞらネット銀行」の増加率は142.2%増(168→407社)と、全金融機関の中で最高だった。

 ネット銀行に続く増加率では、信用金庫が目を引く。増加率上位30では、ネット銀行が3行、銀行は「ゆうちょ銀行」(13位)と「熊本銀行」(27位)、「徳島大正銀行」(30位)の3行にとどまり、残る24行はすべて信金が占めた。信金トップは、全体4位で静岡県掛川市に本店を構える「島田掛川信金」(7.6%増)。同信金は2019年6月の合併で誕生したが、日本最古の信金として知られる。

 「島田掛川信金」は、取引企業に新規開拓やビジネスマッチング支援、事業性評価の取組強化など、積極的なコンサルティング機能を推し進めている。5位は滋賀県近江八幡市が本店の「滋賀中央信金」。コロナ関連の資金繰り支援など、事業継続への積極的な取り組みが活きている。以下、6位「中栄信金」(神奈川県秦野市)、7位「平塚信金」(神奈川県平塚市)、8位「但陽信金」(兵庫県加古川市)などがランクインした。

 パソコンやスマートフォンでインターネットを介し、申込から口座開設までネットで完結。振込手数料が安く、24時間営業で効率的なネット銀行が人気だ。一方で、小回りを利かせた寄り添う支援が強みの信金も増加率の上位に入る。まさにニーズに応じた金融機関の選択が加速していることが増加率ランキングに表れている。