表題は第一生命経済研究所が発表した主席エコノミスト・長濱利廣氏のレポートだ。それによると、世界的に異常気象を招く恐れのあるエルニーニョ現象が続いている。エルニーニョ現象の日本への影響として、秋から冬の気温が高めとなる傾向があり、景気への悪影響が懸念される。エルニーニョ現象とは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で、海面水温が平年より1~5度高くなる状況が1年から1年半続く現象である。
エルニーニョ現象が発生すると、地球全体の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向がある。エルニーニョ現象の発生時期と我が国の景気局面には関係がある。過去のエルニーニョ現象発生時期と景気後退局面をみると、90年代以降全期間で景気後退期だった割合は27.0%となるが、驚くべきことに、エルニーニョ発生期間に限れば44.4%の割合で景気後退局面に重なっており、エルニーニョ発生時の景気後退確率は1.6倍となる。
実際、2015年のエルニーニョ発生局面では記録的な暖冬に見舞われ、10~12月期の全国平均気温は平年より約+1.2℃高くなった。この暖冬の影響もあり 2015年10~12月期の消費支出(家計調査)は前年比▲3.1%の減少に転じた。2015年10~12月期の実質国内家計最終消費支出も同+0.1%と伸びが急減速した。被服・履物の支出額が大幅に減少し、冬のレジャーの低迷により娯楽・レジャー・文化でも暖冬が逆風になった。
厳冬で業績が左右される業界としては、冬物衣料関連がある。また、電力・ガス等のエネルギー関連のほか、製薬会社やドラッグストア等も過去の暖冬では業績が大きく左右される。自動車や除雪関連といった業界も暖冬の年には業績が不調になりがちだ。鍋等、冬に好まれる食料品を提供する業界やスーパー、食品容器等の売上も減少しやすい。冬物販売を多く扱うホームセンターや暖房器具関連、冬のレジャー関連などへの悪影響も目立つ。
エルニーニョは世界的な現象であるため、海外経済にも影響が及べば、穀物価格高騰など貿易面を通じた悪影響もある。今後の景気動向次第では、減速感が明確になりつつある日本経済に暖冬が思わぬダメージを与える可能性も否定できない。特に足元の個人消費に関しては、実質賃金低下等のマイナスの材料が目立つが、今後の個人消費の動向を見通す上では、エルニーニョによる暖冬といったリスク要因も潜んでいることには注意が必要だ。
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