経済産業省はこのほど「知っておきたい経済の基礎知識」を発表した。今回は「S+3E」。S+3E(エスプラススリーイー)とは、安全性(Safety)を大前提として、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時に実現する考え方。日本のエネルギー政策は「S+3E」の達成が重要と考えられている。「安全性(Safety)」は、日本のエネルギー政策を考える時に、大前提とされているもの。
東京電力福島第一原子力発電所で起こった原子力発電事故の経験や、それに対する反省と教訓は、2011年以降、日本のエネルギー政策の原点となっている。「安定供給(Energy Security)」は、ロシアによるウクライナ侵略で、あらためてエネルギー輸入にともなうリスクが注目されている。例えば、ホルムズ海峡やパナマ海峡など、船舶の往来が集中するポイントで何か起これば、輸入が難しくなるというようなリスクもある。
このような輸入リスクに備えるためには、ひとつの国や地域からの輸入に依存せず、さまざまな国から輸入することが望まれる。また、自給率を高めていくことや、自然災害に強いエネルギーシステムをつくることも必要だ。「経済効率性」は、2021年から、新型コロナ感染症からの経済回復によるエネルギー需要の急拡大、ロシアによるウクライナ侵略などによる世界情勢の影響から燃料の需給がひっ迫し、ガソリン代や電気料金が上がっている。
また、再生可能エネルギーの拡大による「賦課金」の増加や、少ない燃料で大量のエネルギーをつくる効率性などもエネルギー価格に影響を与える。エネルギー価格は、生活や仕事に広く影響をおよぼす可能性があるため、エネルギー政策では、「経済効率性(Economic Efficiency)」を考えることも大切だ。そして、「S+3E」の中の最後のEに「環境適合(Environment)」がある。
「カーボンニュートラル」、「脱炭素」など、気候変動対策としてのCO2削減が注目され、エネルギー分野においてもCO2を排出しないクリーンエネルギーへの転換が求められている。そのほかモノが生まれてから廃棄されるまでの一連の流れのなかで排出される「ライフサイクルCO2」の量や、SOx(硫黄酸化物)といった大気汚染物質の排出などの「環境適合(Environment)」も、エネルギー政策で重要となる要素のひとつだ。
経済産業省では、この「S+3E」の考え方を大前提に、2030年度における日本のエネルギー需給の見通しである「エネルギーミックス」を策定している。資源に恵まれない日本では、すべての面において優れたエネルギーは存在しない。エネルギー源ごとの強みを生かし、弱みが補完されるように、複数のエネルギー源を組み合わせて多層的なエネルギーの供給構造を実現することが大切だ。