懲戒解雇で退職金を「全く支給しない」企業は6割強

 労務行政研究所が、各企業の懲戒制度の内容や30のケース別に見た懲戒処分の適用判断などを調査した「企業における懲戒制度の実態調査」結果(有効回答数225社)によると、30のケースべつにみた被懲戒者に対する懲戒処分を、過去の事例等から判断してもらったところ(複数回答)、最も重い懲戒処分である「懲戒解雇」を適用するという回答が最も多かったのは「売上金100万円を使い込んだ」(75.9%)ケースだった。

 以下、「無断欠勤が2週間に及んだ」(74.1%)、「社外秘の重要機密事項を意図的に漏えいさせた」(69.4%)、「業務に重大な支障を来すような経歴詐称があった」(60.2%)、「満員電車で痴漢行為をして鉄道警察に捕まり、本人も認めた」(59.7%)、「終業後に酒酔い運転で物損事故を起こし、逮捕された」(59.4%)、「営業外勤者が業務中に自動車で通行人をはねて死亡させ、本人の過失100%だった」(52.0%)などが続いた。

 解雇における退職金の支給状況をみると、諭旨解雇では、退職金を「全額支給する」が 30.5%と最も多く、「全額または一部を支給する」(4.7%)と「一部支給する」(20.0%)を合わせると半数以上が何らかの支給を行っている。一方、懲戒解雇では、「全く支給しない」が63.2%と6割以上を占め、「全額支給する」はわずか0.4%であり、「一部支給する」も1.8%にとどまっている。

 論旨解雇で「全額支給する」企業を従業員規模別にみると、「300~999人」が40.3%、「1000人以上」が31.7%で、「300人未満」の企業は19.0%と少ない。ちなみに、懲戒解雇は、懲戒処分の中で最も重いもので、使用者が一方的に労働契約を解消する処分であり、諭旨解雇は、懲戒解雇より一段階軽い懲戒処分の一種で、退職願等の提出を勧告し、退職を求める処分(諭旨退職・依願退職ともいう)だ。

 懲戒段階の設定数としては、「6段階」が41.8%で最も多く、以下「7段階」28.4%、「5段階」15.6%と続く。設定している懲戒処分の種類(複数回答)をみると、「懲戒解雇」はすべての企業で設定されており、「譴責」、「減給」、「出勤停止」もそれぞれ9割以上と多い。また、懲戒処分の実施パターンで最も多いのは、「譴責、減給、出勤停止、降格・降職、諭旨解雇、懲戒解雇」の6段階で31.5%となっている。

 同調査結果は↓

https://www.rosei.or.jp/attach/labo/research/pdf/000085594.pdf