コスト100円上昇の売価反映43.6円、企業負担6割弱

 昨年から続く電気代やガソリン・軽油を含むエネルギー価格の高騰は、収益を圧迫するなど企業経営に陰を落としている。帝国データバンクの集計では、価格転嫁を取引先から拒絶されたり、僅かな値上げしか認めてもらえず、結果的に経営破綻を余儀なくされた「値上げ難型」の物価高倒産は少なくとも23件(2023年1~7月)判明し、前年同期の12件に比べて倍増ペースで推移しているなど、価格転嫁が厳しい企業の倒産が目立つ。

 そこで、帝国データバンクが現在の価格転嫁に関する企業の見解を調査した結果(有効回答数1万1265社)によると、自社の主な商品・サービスにおいて、コストの上昇分を販売価格やサービス料金に転嫁できている程度は、コストの上昇分に対して『多少なりとも価格転嫁できている』企業は74.5%となった。その内訳をみると、「5割以上8割未満」が約2割(19.8%)で最も高かった。

 以下、「2割未満」(19.0%)、「2割以上5割未満」(16.8%)、「8割以上」(14.4%)と続いた。「10割すべて転嫁できている」企業は4.5%だった。一方で、「全く価格転嫁できない」企業は12.9%と、前回調査(2022年12月)より3.0ポイント低下したものの、現時点(2023年7月18日~7月31日)でも価格転嫁が全くできていない企業が1割を超えていることが明らかになった。

 コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率」は43.6%となった。これはコストが100円上昇した場合に43.6円しか販売価格に反映できていないことを示している。前回調査(39.9円)より3.7円転嫁が進んだが、依然として6割弱のコストを企業が負担する状態が続いている。価格転嫁率を業種別にみると、価格転嫁率が高い業種では、「紙類・文具・書籍卸売」が65.7%でトップだった。

 次いで、「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(64.3%)、「化学品卸売」(63.1%)が続き、価格転嫁率が6割を超えたのはいずれも卸売業だった。一方、低い業種では、一般病院や老人福祉事業といった「医療・福祉・保健衛生」(15.2%)が最も低く、映画・ビデオ制作業やパチンコホールなどを含む「娯楽サービス」(21.6%)や「リース・賃貸」(24.8%)、「農・林・水産」(25.6%)が続いた。

 「価格転嫁に関する実態調査」は

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p230812.pdf