区分地上権が設定されている宅地は相続税を評価減

 区分地上権とは、トンネルや道路などの工作物を所有するなど土地の上下の一定層のみを目的として設定された地上権をいい、土地の上下のすべてについて効力が及ぶ地上権とは別のものとして評価される。民法上、土地の所有権とはその土地の地表に限らず上下に及ぶとされているので、地下や空中であっても土地所有者の許可なく利用することはできない。したがって、相続税評価は下がることになる。

 例えば、本来なら地上8階地下2階のビルが建築できる土地なのに区分地上権が設定されたことにより荷重制限がかけられて地上5階地下1階までのビルしか建築できない、というように土地利用に制限がかけられる分、評価額も下がる。区分地上権の価額は自用地価額にその区分地上権の設定内容に応じた土地利用制限率を基とした割合(区分地上権の割合)を乗じて計算するか、もしくは区分地上権の割合を30%として計算することもできる。

 土地利用制限率とは、土地の利用が妨げられる程度に応じて適正に定めた割合であり、公共用地の取得に伴う損失補償基準細則別記2で定められている。ともあれ、区分地上権が設定されている宅地の評価は、少なくとも30%は評価減できる。都心部の地下利用がこれからも増えてくれば、同様のケースも増えてくる可能性もあるが、都心部の浅い地下はもう大混雑しており、これから新しい施設を設置しようとすると相当深くしなければならない。

 ただ、2001年に施行された「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」では、首都圏・近畿圏・中部圏において、地下40メートル以深もしくは支持地盤(高層建築物の基礎杭も耐えられる地盤)上面から10メートル以深のいずれか深いほうであれば道路・河川・鉄道・電気・ガス・上下水道などの公共事業に関しては区分地上権の設定をせずに利用できる。流石にそこまで深く掘れば所有者の土地利用には影響がないということだろう。