日本ホテル協会はこのほど、「経営基盤の強化」や「人材不足への対応」を中心とした2024年度税制改正要望を取りまとめ発表した。経営基盤の強化については、2019年に発生した新型コロナ感染症が落ち着きを見せはじめ、ようやく宿泊需要が戻りつつあるが、コロナ禍の2年間の純損失はコロナ前の純利益の42年分に相当するなど大きな影響を受け、負債比率(自己資本に対する負債の割合)は618%に達していると指摘。
そこで、人手不足、物価高騰の影響も深刻となっていることから、観光立国を支える基盤インフラとして使命を果たすため、ホテル業の経営基盤を強化する税制改正を要望している。具体的には、コロナ禍に伴う人流抑制により生じた巨額の赤字に対応し、大企業について欠損金の繰越控除を繰越控除前の所得の50%とする上限を撤廃することや、繰越期間の10年の制限を20年に延長することを求めている。
また、産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定を受けた場合、大企業でも特例事業年度に発生した欠損につき投資の範囲内で100%まで繰越控除を可能とする特例について、新たな計画認定に基づく適用を認めるとともに、合わせて事業年度及び適用期間を延長することや、事業用資産の買換え特例の要件緩和、固定資産税(土地)の負担調整措置の延長と拡充、固定資産税(家屋)の負担軽減なども盛り込んでいる。
一方、経営危機でホテルから人材が流出した結果、回復する観光需要に対応するため早急に人材を確保・育成する必要があると指摘。観光立国を支える人材への投資を促進するため、2005年度から2008年度(中小企業は2011年度)まで存在した「人材投資促進税制」(教育訓練費の増加率に応じ、税額控除を認める制度)の復活を要望。また、賃上げ促進税制の延長と拡充、人材確保等促進税制の復活も求めた。
賃上げ促進税制は、適用期限の延長に加えて、現在、大企業については継続雇用者の給与等支給額の増加を中小企業については雇用者全体の給与等支給額の増加をそれぞれ要件として税額控除を認め、さらに教育訓練費が増加していれば追加の税額控除を認める制度内容を、大企業・中小企業ともに継続雇用者か雇用者全体かどちらかの基準を満たせば適用できるよう見直すことを求めている。
日本ホテル協会の税制改正要望は
https://www.j-hotel.or.jp/uploads/jhotel-admin/tax-reform-request-for-FY2024.pdf