日本監査役協会が、同協会にE-mailアドレスが登録されている全監査役等から1社につき1回答の回答依頼をして6月に実施した「取締役のコンプライアンス意識調査」結果(有効回答数2655社)によると、過去の取締役の職務の遂行に関し、不正の行為や法令・定款に違反する重大な事実発生の有無は、96%とほとんどの会社が「なかった」と回答したが、わずか4%の企業ながら、「重大な不正等が発生した」と回答した。
過去に取締役の職務執行において、法令や定款に違反する重大な行為があった場合に、監査役等としての対応(複数回答)は、「取締役会への報告」(34%)、「取締役との面談」(34%)が中心となっている。「取締役の不正行為に対する差止請求権の行使」に至るケースはわずか(1%)だった。「前任監査役等の任期中の発生につき不明」が4割弱(38%)にのぼることから、重大事案への対応に係る引継ぎに課題もあるとしている。
自社の取締役のコンプライアンス意識について最も近いものについては、90%と大半の取締役が、その職務執行にあたって、一定水準以上の高さでコンプライアンスを意識している(「常に高い意識で……」32%、「一定水準の意識をもって……」58%)。その中でも、常に高いコンプライアンス意識があるとした回答は3割程度となっていることから、さらに高いコンプライアンス意識の徹底が望まれる。
取締役のコンプライアンス意識の把握や向上に関して実施している施策について近いもの(複数回答)は、「取締役会、経営会議等において、コンプライアンスに関する定期的意見交換をしている」会社が59%と最も多く、次いで、「取締役職務(業務)執行確認書を取得」(45%)している会社が続いたほか、「監査役による個別面談」(43%)、「外部講師による研修や講義」(36%)も多い。
上記の「取締役職務(業務)執行確認書」の位置付け(複数回答)については、取締役職務執行確認書は、「取締役自身の職務に関する理解を高めてもらうため」に実施している会社(77%)が最も多い。次いで、「期末において取締役の不正行為等の有無を確認するため」に実施している会社(74%)が僅差で続き、「監査報告書を支える資料として作成」している会社(65%)も少なくない。
同調査結果は
https://www.kansa.or.jp/wp-content/uploads/2023/08/el20230807tekiji.pdf