厚生労働省は7月27日、2022年1年間に賃金不払が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導の結果を取りまとめ、監督指導での是正事例や送検事例とともに公表した。この公表は、これまで、支払額が1企業当たり100万円以上の割増賃金不払事案のみを集計してきたが、今回から、それ以外の事案を含め賃金不払事案全体を集計することとし、これに伴い、集計内容を変更している。
監督指導結果によると、2022年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数は2万531件、対象労働者数は17万9643件、金額は121億2316万円だった。労働基準監督署が取り扱った賃金不払事案のうち、2022年中に、労働基準監督署の指導により使用者が賃金を支払い、解決されたものは、件数が1万9708件(96.0%)、対象労働者数が17万5893人(98.0%)、金額が79億4597万円(65.5%)となっている。
監督指導状況を業種別にみると、件数では、「商業」が22%を占めて最も多く、次いで、「製造業」(20%)、「保健衛生業」(14%)、「建設業」(14%)などと続く。対象労働者数では、「商業」が23%で最も多く、次いで、「製造業」(20%)、「保健衛生業」(17%)、「建設業」(7%)などが続く。金額では、「製造業」が31%を占めて最も多く、次いで、「保健衛生業」(13%)、「商業」(13%)、「建設業」(11%)などだった。
是正事例をみると、機械器具製造業A社は、「タイムカード等がなく、労働時間が適正に把握されていない」との情報を基に、労基署が監督指導を実施。労働時間は、労働者自身が始業・終業時刻等をパソコンに入力する方法で把握していたが、パソコンの使用記録や製造機械の作業記録と自己申告で残業時間として申請された時間に乖離が認められたため、労働時間の過少申告の原因究明と、不払となっている割増賃金を支払うよう指導した。
また卸売業B社は、「一定の時刻以降の残業時間に対する残業代が支払われない」との情報を基に、労基署が監督指導を実施。労働時間は、出退勤時刻を勤怠システム、残業時間は自己申告により把握していたが、勤怠システムでの出退勤時刻の記録と自己申告で残業時間として申請された時間に乖離が認められたため、その乖離の原因及び不払割増賃金の有無について調査を行い、不払が生じている場合には割増賃金を支払うよう指導した。
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