東京商工リサーチが発表した2023年上半期(1~6月)の「人手不足関連倒産の状況調査」結果によると、賃上げが話題になるなか、中小企業には「人件費高騰」が深刻な打撃を及ぼしていることが分かった。2023年上半期の「人手不足」関連倒産は67件(前年同期比139.2%増)で、前年同期の(28件)の2.3倍に急増。上半期では、調査を開始した2013年以降、人手不足が深刻だった2019年の82件に次ぐ、2番目の多さとなった。
資本金別では、最多が「1千万円以上5千万円未満」の26件(前年同期比271.4%増、構成比38.8%)だったが、1億円以上も7年ぶりに1件と、人手不足が大きな経営課題に浮上。経済活動が平時に戻るなか、企業は「人手不足」に悩まされ、なかでも業績回復が遅れ、資金余力が乏しい中小企業ほど賃上げは容易ではないが、賃上げを実施しないと人材流出が避けられず、収益と人員確保の狭間で「人手不足」関連倒産の急増を招いている。
要因別は、最多が「求人難」の27件(前年同期比58.8%増、構成比40.2%)で、2年連続で前年同期を上回った。20件を上回ったのは、2020年同期(26件)以来、3年ぶり。次いで、「人件費高騰」が24件(前年同期ゼロ、構成比35.8%)で、調査を開始した2013年同期以降、2015年同期の17件を超え、最多を記録。また、「従業員退職」は16件(前年同期比45.4%増)で、4年ぶりに前年同期を上回った。
産業別は、10産業のうち、農・林・漁・鉱業、卸売業、金融・保険業、不動産業を除く6産業で前年同期を上回った。最多は、「運輸業」の19件(前年同期比375.0%増)。運輸業は人手不足が顕著で、4年ぶりに前年同期を上回り、前年同期の4.7倍と大幅に増加。次いで、「サービス業他」が18件(同50.0%増)で、2年連続で前年同期を上回った。うち、老人福祉・介護事業を含む「医療,福祉事業」(9件)が半数を占めた。
また、「建設業」も13件(前年同期比116.6%増)で、2年連続で前年同期を上回り、慢性的な人手不足に陥っている産業が上位に並んでいる。このほか、「製造業」7件(同250.0%増)と「情報通信業」5件(同400.0%増)が2年ぶり、「小売業」3件(同200.0%増)が4年ぶりに、それぞれ前年同期を上回った。不動産業が2年連続、農・林・漁・鉱業が3年連続、金融・保険業が調査を開始した2013年から、それぞれ発生しなかった。
形態別件数は、消滅型の「破産」が64件(前年同期比137.0%増)で、4年ぶりに前年同期を上回った。構成比は95.5%(前年同期96.4%)と大半を占めた。一方、再建型は、「民事再生法」が前年同期と同件数の1件だった。コロナ禍から業績回復が遅れる企業は、人手不足で稼働率が低下し、受注機会を喪失し業績回復が遅れるため、先行きが見通せずに事業継続を諦め破産を選択するケースが多い。
同調査結果は