中小企業庁は10日、適切に価格交渉・価格転嫁できる環境整備のために、全国47都道府県に設置しているよろず支援拠点に「価格転嫁サポート窓口」を新設し、下請中小企業の価格交渉・価格転嫁を後押しすると公表した。この背景には、原材料価格やエネルギー費などのコスト上昇の中、コスト増を下請中小企業だけでなくサプライチェーン全体で負担し、雇用の約7割を支える中小企業でも賃上げができる環境の整備が必要なことがある。
そのためには、コストの価格転嫁をはじめとした下請取引の適正化を行うことが欠かせないとの考えだ。中小企業庁が実施した2023年3月の「価格交渉促進月間」に関するアンケート調査では、「価格交渉を申し入れて応じてもらえた」、または「発注側からの声掛けで価格交渉ができた」と回答した下請中小企業の割合は全体の約58%で、2022年9月の調査時点と比較して増加した。
一方、「発注側から交渉の申入れなし」、「協議に応じてもらえず」または「減額のために協議申入れあり」との回答割合も全体の約16%となり、二極化が進行していた。また、民間の信用調査会社による調査では、価格転嫁ができた企業のうち多くが、「原価を示した価格交渉」が有効だったと回答があり、効果的な価格交渉のためには、コストの増加分を定量的に把握し、原価を割り出して提示することが有益という事例も報告されている。
こうした「価格交渉促進月間」などの調査結果を踏まえ、中企庁では、中小企業などが、原材料費やエネルギー価格、労務費などの上昇分を、発注側企業に適切に価格転嫁するための支援体制を強化すべく、全国47都道府県に設置している経営課題に対応するワンストップ相談窓口である「よろず支援拠点」に「価格転嫁サポート窓口」を新設することとしたわけだ。
価格転嫁サポート窓口では、価格交渉に関する基礎的な知識や原価計算の手法の習得支援を通じて、下請中小企業の価格交渉・価格転嫁を後押しする。また、商工会・商工会議所等においても、「価格交渉ハンドブック」の活用等により、中小企業の価格転嫁を支援する全国的なサポート体制を整備する。