出向者の退職金は出向元の法人が出向者へ支払うこととなるが、このうち出向期間中に対応する退職金については出向先の法人が負担すべきものとして、通常、出向先の法人から出向元の法人へ負担金が支出される。この負担金の支出の時期として、(1)出向先の法人から出向元の法人へ復帰した時、(2)出向元の法人を退職した時、(3)出向期間中、の3つの場合がある。
負担金の取扱いは、上記の「負担金の支出時期」の(1)または(2)の場合、つまり、出向先の法人から出向元の法人へ復帰した時または出向元の法人を退職した時に負担金を支出する場合には、原則として、出向先の法人の支出した事業年度の損金の額に算入される。また、 (3)の出向期間中に負担金を支出する場合には、下記の2つの要件のいずれにも該当するときは、出向先の法人の支出した事業年度の損金の額に算入される。
2つの要件とは、(1)あらかじめ定めた負担区分に基づいて定期的に支出していること、(2)その支出する金額が、出向期間に対応する退職金の負担額として合理的に計算された金額であることだ。この負担金を損金の額に算入することは、出向者が出向先の法人において役員になっているときでも認められる。また、出向者が出向元の法人を退職しても、出向先の法人で引き続き勤務していることがある。
この場合に、出向先の法人が出向元の法人に支出する出向期間に対応する退職金相当額は、たとえその出向者が、出向先の法人において引き続き役員または使用人として勤務しているときでも、その支出した事業年度の損金の額に算入される。なお、出向先法人が出向者に対して出向元法人が支給すべき退職給与のうちその出向期間に係る部分の全部又は一部を負担しない場合でも、相当な理由があるときは、これを認めることとされている。
相当な理由があるときとは、例えば、親会社が経営危機に瀕している関係会社に強制的に出向させ、業務の監督や経営指導等を行ったような場合などが該当すると思われる。