私的整理による収益性向上、企業の5.8%が関心

 政府は6月6日公表の「新しい資本主義」の実行計画のなかで、事業再構築法制の整備を明記。倒産手続き外で、多数決による金融債務の減免を念頭に置く内容だ。東京商工リサーチが発表した「私的整理に関する企業調査」結果(有効回答数5627社)によると、借入金の返済について「懸念あり」と回答した企業は14.5%にのぼる。コロナ禍の過剰債務で再建を模索する企業は多いだけに、事業再構築法制の整備の行方が注目を集めている。

 私的整理を活用した収益性向上については5.8%の企業が検討する可能性が「ある」と回答した。法制化された場合、一定数の企業が活用する可能性を示している。また、私的整理を検討する上で重視することについて、約7割(68.5%)の企業が「現在の事業や取引に影響を与えないこと」と回答。一方、多数決による債務減免は手続き保証の観点から、裁判所の関与と公告が必要との意見もある。

 この場合、レピュテーション(風評)リスクによる事業価値の毀損も想定される。私的整理を巡る議論は、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の運用が2022年4月から始まり、制度が拡充されている。ただ、開始から1年が経過したものの、利用件数の統計(公表)はなく効果測定がしにくい状況だ。事業再構築法制の整備では、公告が不要となった場合でも政策効果の検証を伴う枠組みも必要とみている。

 借入金の返済見通しについて、コロナ禍直前(2020年1月頃)と現在で返済見通しに変化は、「コロナ禍直前は問題なかったが、現在は懸念がある」と「コロナ禍直前から懸念があり現在も懸念がある」を合計した「懸念あり」は、全企業で14.5%だった。内訳は、大企業が5.2%、中小企業が15.7%。「懸念あり」と回答した企業の業種で最も構成比が高かったのは、「織物・衣服・身の回り品小売業」の56.2%だった。

 中小企業活性化協議会(旧・再生支援協議会)や事業再生ADRなどの私的整理手続きを活用して、経常黒字化や債務超過解消等を目指した収益性の向上のための取組みを検討する可能性は、大企業の「ある」は2.0%、中小企業は6.4%だった。全企業では5.8%。「ある」と回答した企業を業種別でみると、トップは「飲食業」の31.4%、次いで、「織物・衣服・身の回り小売業」の15.3%だった。

 私的整理を検討する上で重視すること(複数回答)では、最多は「現在の事業や取引に影響を与えないこと」の68.5%。以下、「多額の費用を要しないこと」の55.5%、「窮境に陥る前に手続きを開始できること」と「簡潔で長期間を要しないこと」のそれぞれ47.0%と続く。規模別では、「債権者間の平等を重視するものであること」は大企業が58.3%、中小企業は19.3%で、40ポイント近く差が開いた。

 同調査結果は

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1197736_1527.html