「物価高倒産」は67件、3ヵ月連続の60件超え

 帝国データバンクが5月31日に発表した「食品主要195社」価格改定動向調査によれば、原材料高を中心とした値上げ圧力は徐々に低下しつつあるものの、新たな値上げ要因として人件費の上昇や、電気・ガスといったエネルギーコストの上昇がコストアップの大きな要因となってきている。6月1日分から電力各社の電気料金の値上げが始まり、引き続き物価上昇の流れは続きそうだ。

 このような状況下、帝国データバンクが発表した「物価高倒産動向調査」結果によると、10ヵ月連続で過去最多を更新していた「物価高倒産」の5月の件数は前年同月より44件多い67件となった。一服感が見られるものの、3ヵ月連続で60件を上回り、引き続き高い水準にある。業種別の内訳は、「建設業」が16件で最も多く、次いで、「製造業」(15 件)、「卸売業」(10件)、「小売業」(9件)、「運輸業」(6件)と続いた。

 全体の企業倒産も増加傾向で推移するなか、物価高に収益改善が追いつかずに倒産に至るケースが増える可能性は高い。2023年1月から5月までの累計は312件となり、前年同期(62件)の約5倍となった。312件を業種別にみると、「建設業」(67件、構成比21.5%)がトップ。次いで「製造業」(66件、同21.2%)、「運輸業」(44件、同14.1%)、「小売業」(43件、同13.8%)、「卸売業」(41件、同13.1%)と続いた。

 さらに312件を業種詳細別でみると、「運輸業」が44件で最多。『2024 年問題』を抱え、業界環境は厳しい状況が続いている。次いで、資材高の影響を受けた木造建築工事業者や土木工事業者などの「総合工事業(元請け)」や、とび工事などの「職別工事業(下請け)」の建設業者が上位にくる。そのほか、製造コストが増加している「飲食料品製造」、人手不足など人的コストが負担となる「飲食店」など食品関係の倒産が目立った。

 要因別にみると、「原材料」が30.7%で最多となり、特に食品やアパレル関連を中心に『製造業』の倒産が目立った。次いで、「エネルギーコスト」(25.6%)、「包装・資材」(22.4%)と続き、『運輸業』や『建設業』で多くみられた。電気料金などエネルギー価格の上昇が続いているため、今後も物価上昇に収益が追いつかず倒産に至る可能性がある。引き続き「物価高倒産」は大幅な減少に転じることなく、高い水準で推移するとみられている。