GC注記・重要事象の記載は80社、依然高水準続く

 東京商工リサーチが発表した「上場企業の継続企業の前提に関する注記調査」結果によると、2023年3月期決算を発表した上場企業2354社のうち、決算短信で「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記:GC注記)を記載したのは24社(中間決算時23社)だった。一方、GC注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」は56社(同62社)だった。

 GC注記と重要事象を記載した企業は合計80社で、コロナ禍以降で最多だった前年度の2022年3月期本決算(94社)から14社減少した。繁華街や行楽地の人出回復やインバウンド需要の回復など、コロナ禍も出口に向けて消費関連を中心に明るさが見えつつある。コロナ禍で上場企業もダメージを受けたが、円安を追い風に輸出企業を中心に業績回復が鮮明となり、株価もバブル期以来の高値を記録している。

 ただ、GC注記・重要事象の記載企業は、50社台で推移していたコロナ前の水準と比較すると、大幅に増えており、2023年3月期も80社のうち、31社(構成比38.7%)がコロナ禍の影響を要因に挙げた。これに加え、円安を背景にした原材料高・燃料高や、人手不足に伴うコストアップが深刻な経営課題に浮上しており、業績回復と業績不振の二極化が鮮明になっている。

 GC注記・重要事象を記載した80社を理由別に分類すると、70社(構成比87.5%)が重要・継続的な売上減や損失計上、営業キャッシュ・フローのマイナスなどの「本業不振」が理由。次いで、「新型コロナ影響あり」が31社(同38.7%)「財務制限条項に抵触」が14社、「資金繰り悪化・調達難」が13社と続く。債務超過は上場廃止基準にも抵触するため、利益確保のほか、増資などによる早急な資本増強策が求められる。

 GC注記・重要事象を記載した80社を業種別にみると、「製造業」が28社(構成比35.0%)で最多。以下、「サービス業」と、外食業者を含む「小売業」が同数の17社(同21.2%)、「情報・通信業」が8社(同10.0%)と続く。母数が多い製造業とコロナ禍の影響が大きいサービス業と小売業が全体を押し上げ、上位3業種で62社(同77.5%)にのぼり、全体の約8割を占めた。

 新型コロナによる影響を要因の一つに挙げた企業は31社で、前年度から12社(27.9%)減少した。需要が持ち直して業績回復を果たした企業の記載解消が目立った。ただし、業種別では依然として「小売業」が11社(構成比35.4%)と最多で、このうち外食産業が8社と大半を占める。次いで、「サービス業」が9社(同29.0%)と続き、ホテル・旅行などの観光関連や、娯楽などの消費関連サービスがある。

 同調査結果は

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1197709_1527.html