酒類業界の景況感、新型コロナ前の水準に急回復!

 酒類業界は、新型コロナ感染拡大による緊急事態宣言、まん延防止等重点措置による行動制限で最も悪影響を受けた業界の一つ。とりわけ、宴会や会食の中止、自粛が相次ぎ厳しい経営環境に置かれた飲食店では酒類の消費が大きく落ち込んだ。2023年に入り、第8波の流行がピークアウトしマスク着用ルールの緩和に続き、5月8日には新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザなどと同じ「5類」へ移行した。

 そうしたなか、旺盛な旅行需要や卒業、歓送迎会に伴う消費活動が目立ち、個人消費関連を中心に幅広く景況感は上向き、ポストコロナに向けた動きが加速している。そこで、帝国データバンクは、新型コロナ流行前から現在に至るまでの酒類業界(製造・卸売・小売・飲食)に絞った景気DI(50を境に上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味する)の動きをまとめ、「酒類業界の景況感に関する動向調査」として発表した。

 調査結果によると、2019年1月から2023年4月までの酒類景気 DI(「酒場DI」)は、1回目の緊急事態宣言が発出された2020年4月に最低となる5.1を記録。以降、ゆるやかに回復するも、感染者数の増減や行動制限の影響により大きく上下しながら、全産業の景気DIを大きく下回る水準で推移した。しかし、2023年に入り新型コロナの5類移行に向けた検討が本格化すると、反動増の要素を含みつつも景況感は急激に上向いた。

 2023年4月は45.7と2ヵ月連続で全産業の景気DI(44.6)を上回った。コロナ禍により大きく落ち込んだ酒類業界の景況感は、街の賑わいに比例して回復しつつある。今回の調査では、コロナ禍での行動制限が酒類業界に与える影響が大きかったことが分かった。1回目の緊急事態宣言が発出されたタイミングで酒場DIは非常に悪い5.1にまで低下し、2022年以降は回復悪化を繰り返しながらも上向き、2023年に入って大幅に改善した。

 企業からは、「新型コロナ禍前の販売実績まで回復しつつある」(清酒製造、宮城県)ほか、飲食業界は、リベンジ消費が発生しているといった声が複数挙がっている。一方で、「生活習慣の変化が一時的なものではなく、夜の外出をする人が減ったままの日常に変化したため、飲み会も減り、居酒屋の利用が戻らない層がある」(酒場,ビヤホール、神奈川県)というように厳しい声も依然ある。