販売奨励金請求書により適格返還請求書の交付は不要

 販売促進の目的で、一定の商品を対象として、取引高に応じて、取引先(売上先)に販売奨励金を支払うケースがある。そこで、販売奨励金の精算に当たっては、取引先から交付される奨励金請求書に基づき支払い、消費税については、売上に係る対価の返還等として処理している場合、適格請求書等保存方式(インボイス制度)においては、取引先に対して、改めて、適格返還請求書を交付する必要があるのだろうか。

 販売奨励金は、売上に係る対価の返還等に該当するので、取引先に対し、適格返還請求書を交付する義務がある。適格返還請求書の記載事項は、(1)インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号、(2)売上に係る対価の返還等を行う年月日及びその売上に係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日(インボイスを交付した売上に係るものについては、課税期間の範囲で一定の期間の記載で差し支えない)。

 さらに、(3)売上に係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(売上に係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)、(4)売上に係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額、(5)売上に係る対価の返還等の金額に係る税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率、が記載事項となる。

 上記の場合、取引先が作成する書類である奨励金請求書に販売奨励金に関する適格返還請求書として必要な事項が記載されていれば、取引先との間で、売上に係る対価の返還等の内容について記載された書類が共有されているので、改めて、適格返還請求書を交付しなくてもよいことになる。なお、売上に係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除される。

 具体的には、返還した金額や値引き等の対象となる請求や債権の単位ごとに減額した金額により判定することとなる。この1万円かどうかの判定は、値引き等の金額に標準税率が適用されたものと軽減税率が適用されたものが含まれている場合であったとしても、適用税率ごとの値引き等の金額により判定するものではなく、返還した金額や値引き等の対象となる請求や債権の単位ごとの減額金額により判定することとなる。