初任給「全学歴引上げ」は70.7%と過去10年で最多

 労務行政研究所が発表した「今年4月の新卒入社者の初任給調査」結果(有効回答数157社)によると、2023年度の初任給を前年度から「全学歴引上げ」した企業は70.7%と、昨22年度速報集計時から28.9ポイント上昇し、過去10年で最多となった。一方、「全学歴据置き」した企業の割合は26.1%と、同速報集計時から23.6ポイント低下した。産業別にみると、製造業は83.3%の企業が引き上げたのに対し、非製造業は56.2%にとどまった。

 過去10年間における、初任給を「全学歴引き上げ」た企業の割合(初任給の引上げ率)の推移をみると、14年度は輸出産業を中心とする企業業績の回復、デフレ脱却に向けた賃上げの政労使合意などを背景に、13年度の4.2%から19.0ポイント上昇の23.2%となり、賃上げ基調が続いた15年度はさらに上昇し39.9%となった。16年度と17年度は引上げ率が30%前後を推移したが、18年度は再び上昇し39.7%となった。

 19年度、20年度は下降基調ながら30%台で推移したが、21年度はコロナ禍による業績不振の影響などを受け17.1%と大幅に低下。しかし、22年度は一転して40%台、さらに23 年度は70%を超え、2年連続で大幅な上昇となった。ちなみに、初任給を「全学歴据置き」とした企業は、20年度の58.5%から21年度には74.3%と上昇したものの、22年度は49.7%、23年度は26.1%まで低下し、過去10年で最も低くなっている。

 全産業でみた学歴別の初任給水準は、「大学卒」(初任給に差を設けず、一律設定の場合。以下、一律)22万5686円、「大学院卒修士」24万3953円、「短大卒」19万5227円、「高校卒(一律)」18万3388円となった。同一企業における昨22年度初任給と比較した上昇率は、「大学卒(一律)」3.1%、「大学院卒修士」3.2%、「短大卒」3.5%、「高校卒(一律)」3.7%と、全学歴で3%を超えている。

 2023年度の学歴別決定初任給の改定状況と上昇額は、「大学卒(一律)」では、「引上げ」が71.7%、「据置き」が 28.3%となっており、引き上げた場合の上昇額は「1万円台」が18.6%で最も多く、次いで「5000円台」と「7000円台」が同率の10.5%で続く。引き上げた場合の平均上昇額は9523円となった。

 同調査結果は

https://www.rosei.or.jp/attach/labo/research/pdf/000084904.pdf