人手不足は2030年時点で約700万人にのぼると予測

 みずほリサーチ&テクロノジーズが発表したリポートによると、労働集約的なサービス業種を中心に人手不足が深刻化している。2023年3月調査の日銀短観の雇用人員判断DI(過剰-不足)は▲32%ポイントと、直近で最も人手不足感が強かった2018~19年の水準に接近。正社員は医療・福祉、建設、運輸・郵便等の業種で大幅な不足超。パートタイムは、宿泊・飲食サービス、生活関連サービス・娯楽を中心として大幅不足となっている。

 生産年齢人口の減少ペースは加速し、企業の人手不足感は一段と強まる見込み。総人口は2010年にピークアウト。2065年には9000万人を下回り、高齢化率(65歳以上人口比率)は38%に上昇する見通し。生産年齢(15~64歳)人口の減少ペースは今後加速し、特に2030年代は急ピッチで減少する(2020→2025年:年▲47万人、2025→2030年:同▲59万人に対し、2030→2035年:年▲76万人、 2035→2040年:同▲103万人とマイナス幅は年々拡大)。

 人手不足は今後深刻さを増し、2030年には約700万人の規模にのぼると予測。2030年時点の人手不足を698万人と試算する。人口減が加速する2031年以降は、さらに人手不足が深刻化するリスクがある。労働生産性向上がなければ、潜在成長率は将来的にマイナスに転落すると懸念する。これまで就業者数の維持に寄与してきた女性・高齢者の就業増も、2020年代後半には頭打ちになる。

 また、配偶者のいる非正規雇用女性の40.8%(2017年)、なかでも所得が「50~99万円」と「100~149万円」の層では、半数超が就業調整を実施。年収100万円(住民税)、103万円(所得税)、106万円・130万円(社会保険料)の壁が意識されている模様だ。就業調整がなくなれば、就業者約70万人分に相当する労働時間の増加余地があるとみるが、完全解消には税制・社会保障制度の抜本的改革が必要であり、実現性には疑問符を付けている。

 2023年春闘賃上げ率は約30年ぶりの高水準となった。今後の注目点は、今年の賃上げを契機に持続的な賃金上昇が実現するかどうかだ。これまでは中高年層の人件費削減等が平均賃金の上昇を抑制してきたが、こうした賃金カーブフラット化圧力は2020年代後半にかけて弱まる見通し。今後は人手不足下において、賃金が上がりやすい環境になる可能性があるとみている。

 なお、賃金が持続的に上昇していくためには、(1)企業が賃上げ等によるコスト上昇分を適切に価格転嫁できる環境、(2)ロボットやAI、ソフトウェア等省力化投資による生産性向上、(3)労働者のリスキリングと人材の再配置が不可欠と指摘。政府にはこれらをサポートする取組みが求められるとしている。

 同リポートの全文は

https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/report/2023/pdf/report230428.pdf