出向者が使用人か役員かで異なる給与負担金の取扱い

 近年は、出向を活用する企業が増えており、出向者への給与の税務上の取扱いに関心が高まっている。法人の使用人が他の法人に出向した場合には、その出向した使用人に対する給与を出向元の法人が支給することとしているため、出向先の法人がその出向者の給与(退職給与を除く)に相当する給与負担金を出向元の法人に支出したときは、その給与負担金の額は、出向先の法人におけるその出向者に対する給与(同)として取り扱われる。

 この給与負担金の取扱いは、出向者が出向先の法人において使用人となっているか、役員になっているかにより異なる。具体的には、出向者が出向先の法人において使用人である場合、その給与負担金の額は、原則として、出向先の法人における使用人に対する給与として、損金の額に算入される。また、出向者が出向先の法人において役員となっている場合、一定要件に該当するときは、法人税法の《役員給与の損金不算入》の規定が適用される。

 出向先の法人が支出するその役員に係る給与負担金の支出を出向先の法人における役員に対する給与の支給として、《役員給与の損金不算入》の規定が適用されるわけだ。要件とは、(1)その役員に係る給与負担金の額について、役員に対する給与として出向先の法人の株主総会、社員総会等の決議がされていること、(2)出向契約等でその出向者に係る出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていること、のいずれにも該当する場合だ。

 この取扱いの適用を受ける給与負担金について、事前確定届出給与の規定の適用を受ける場合には、出向先の法人がその納税地の所轄税務署長にその出向契約等に基づき支出する給与負担金に係る定めの内容に関する届出を行うこととなる。なお、出向先の法人が給与負担金として支出した金額が、出向元の法人がその出向者に支給する給与の額を超える場合には、その超える部分の金額については給与負担金としての性格はないこととなる。

したがって、そのことについて合理的な理由がない場合には、出向元の法人に対する寄附金として取り扱われることになるので注意が必要だ。また、出向元法人が出向者の給与を支払っている場合において、出向先法人から出向元法人に対して給与負担金の支払いがないときは、原則として、出向元法人が負担する給与の額について、出向元法人から出向先法人に対する寄附金として取り扱われることにも注意が必要となる。