インボイス制度が開始される10月1日まで約半年となってきたが、初めての制度ゆえ何かと疑問が生じる場面も少なくない。その一つに、適格請求書発行事業者の登録を受けていた親から相続を受け、事業を承継したケースがある。その場合に、適格請求書等保存方式において必要となる手続きや適格請求書発行事業者の登録の効力についてはどうなるのだろうか。この場合、親の死亡が10月1日の前か後で取扱いが異なる。
まず、2023年10月1日から登録を受けることとされていた事業者が、10月1日より前に死亡した場合は、登録の効力は生じない。したがって、相続により事業を承継した相続人が、適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、登録申請書を提出する必要がある(相続人が既に登録申請書を提出していた場合を除く)。 その相続人が、10月1日から登録を受けようとする場合は、9月30日までに登録申請書を提出する必要がある。
次に、2023年10月1日以後に適格請求書発行事業者が死亡した場合、その相続人は「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を提出する必要があり、届出書の提出日の翌日又は死亡した日の翌日から4月を経過した日のいずれか早い日に登録の効力が失われる。また、相続により事業を承継した相続人が、適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、相続人は登録申請書の提出が必要となる(相続人が既に登録を受けていた場合を除く)。
なお、相続により適格請求書発行事業者の事業を継承した相続人の相続のあった日の翌日から、その相続人が適格請求書発行事業者の登録を受けた日の前日又はその相続に係る適格請求書発行事業者が死亡した日の翌日から4月を経過する日のいずれか早い日までの期間については、相続人を適格請求書発行事業者とみなす措置が設けられており、この場合、被相続人の登録番号を相続人の登録番号とみなすこととされている。
国税庁は、登録申請書の提出から登録通知を受けるまでには、その審査等に一定の期間を要するので、相続により事業を承継した相続人が適格請求書発行事業者の登録を受ける場合は、早めに登録申請書を提出するよう呼びかけている。また、相続人を適格請求書発行事業者とみなす措置の適用がある場合、その措置の適用がある期間は被相続人の登録は有効とされている。