最近の物価上昇の傾向は、食料品値上げに象徴される。たとえエネルギー価格が下がっても、今後とも食料品の値上がりは続くだろう。そこで、第一生命経済研究所は、「値上がりしない食料品は何か」を探るため、コロナ禍(2020年1月~2023年2月)での価格変動が小さい品目のランキングを作成した。これは、総務省「消費者物価」の品目別指数を調べて、価格指数の変動係数(=標準偏差/平均)の小さい品目をリストアップしたもの。
その上位ランキングのトップ20品目では、和の食材が目立っていた。「干しのり」(1位)、「梅干し」(6位)、「干ししいたけ」(9位)、「かつお節」(10 位)などがある。和の食材である。それらは、「ご飯のお供」の品目も多い。和の食材は、「物価安定の王様」という評価もできる。しかし、なぜ、ご飯=米に関連する食材の値上がりが見られないのか。その理由を考えると、米の需要が減退しているからだという見方ができる。
米の消費支出額は、総務省「家計調査」によって、消費額を2022年/2000年で比べると、▲50.8%も減少。米の需要が減ると、米の補完財である「ご飯のお供」もひきずられて需要減になる。調べてみると、米類の価格変化でも同様に下落していた。直近3ヵ月(2022年12月~2023年2月)の価格水準を、コロナ前(2019年平均)と比べると、生鮮食品を除いた分野では学校給食に次いで米類が大きく下がっていた。
実は、変動係数が小さい品目には、お酒=アルコール飲料も挙げられる。「ウイスキー」(3位)、「焼酎」(4位)、「ワイン・国産品」(15位)、「ワイン・輸入品」(16位)だ。非アルコール飲料では、「緑茶」(8位)、「果実ジュース」(19位)がある。なぜ、アルコール飲料の価格が安定しているのかという理由は、和食と同じような事情がある。若者などの需要が低迷していることがある。
消費額の2022年/2000年の比較では、▲11.2%の減少だった。すでに、若者のアルコール離れが言われて久しい。消費者の中で若者が増えなくなるとどうしてもシニアへの依存度が高まる。そうすると、年金生活者の所得は増えにくいので、値上げがしにくくなると考えられる。
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