東京商工リサーチが全国の企業を対象に4月3日~11日に実施した「人手不足に関するアンケート調査」結果(有効回答数4445社)によると、正社員の過不足感は、「非常に不足している」の11.4%、「やや不足している」の55.0%を合わせ、「正社員不足」と回答した企業は全体の66.5%と7割超を占めた。アフターコロナの動きと同時に、人手の不足感は企業規模に関係なく広がっている。
規模別にみると、特に、従業員数の多い大企業ほど顕著で、73.2%が「正社員不足」と回答した。一方、中小企業では「非常に不足している」11.2%、「やや不足している」54.3%を合わせて65.5%が「正社員不足」で、7.7ポイントの差があった。中小企業は大企業に比べ、業種によっては業況、受注の回復に時間を要する一面もあり、人員の不足感を訴える企業は、大企業よりも少ない傾向にあった。
一方、非正規社員の充足度合いは、全企業では「充足している」が約6割(57.5%)で、正社員と比べて不足感は薄い。不足感のある業種では、上位に飲食店、宿泊、サービス、道路旅客運送など、コロナ禍の行動制限解除以降に採用意向が高まった業種に偏り、業種による非正規社員の不足感は二極化している。今後、インバウンド需要が本格化すると、この傾向はさらに強まりそうだ。
業種による不足感は、濃淡がはっきりしてきた。運送業では正社員の人手不足が深刻で、観光バスやタクシーなど道路旅客や貨物・物流業者のトラックドライバー、有資格者の充足を求める声が相次ぐ。旅客業者は、中国人観光客の訪日が本格化する今春以降の需要増、物流関連は2024年問題を抱え、今後ますます正社員不足の解消が急がれる。また、飲食、宿泊、娯楽、サービスは、半数以上の企業が不足を訴えている。
一方で、過剰感の強い業種では、印刷関連が正社員、非正規社員ともに上位に並ぶ。編集プロダクションなどの映像・紙媒体の制作や広告、繊維・衣服卸売も正社員では過剰感が強い。印刷をはじめとした紙媒体は、長期に渡り需要の減少が続いてきたうえ、コロナ禍以降、催事等の減少やポスティングの自粛も影響し、受注環境は悪化している。アパレル関連は、コロナ禍により大きな打撃を受け、大手を中心にリストラも相次いだ。
運送、飲食、宿泊など慢性的に人手不足である業種が限定されているのと同様、過剰感のある業種も固定化しつつある。人手不足の長期化は、企業の成長機会や消費創出の場を失う恐れもある。企業や業界単位ではなく、過剰感のある産業から需要や成長余地のある産業への雇用支援を図るなど、官民を挙げた実務的な対策も必要になっている。
同調査結果は