日本不動産研究所が発表した「不動産取引市場調査(2001上期~2022下期)」結果によると、不動産取引市場の規模(取引金額が公表されている取引事例についての取引金額の合計)は、2007上期に約3兆円に達しピークを迎えた。リーマンショックが生じた2008下期には約1兆円程度まで市場が縮小し、ピーク時の約1/3の規模となった。2013上期の金融緩和政策開始以降は大幅に取引が増加し概ね2兆円超えの状況が続いた。
2021下期は過去2番目に多い約2.8兆円に達したものの、金利上昇への警戒感などから2022下期は約2.1兆円まで減少した。また、アセットの構成でみると、引き続きオフィスの割合が高い。もっとも、2022下期については、大手町プレイスの影響が大きく、オフィス取引自体が増加しているわけではない。一方、将来の成長性やインバウンド回復に期待した物流やホテル等の取引は依然として活発な状況が続いている。
取引主体について、2021年までJ-REITは一貫して買越を維持し、J-REITへの物件集約が進んだ。J-REITが一度不動産を取得すると、売却するケースは限定され、結果として、市場での需給バランスは安定化してきた。しかし、2022年はインベスコオフィスジェイリート投資法人の物件売却や、J-REITの取得金額の減少等により買越が減少。一方で、SPC・AM(私募ファンド等)の買越が増加、市場の私募化が進んでいることがうかがえる。
外資系プレーヤーの取得金額は2007上期に約9100億円に達し当時の市場を席巻した。リーマンショック後は激減したものの、2013上期の金融緩和政策開始以降は外資系プレーヤーによる取引も再度活発化した。コロナ禍以降においても外資系プレーヤーによる取引が目立っており、2022上期の取得金額は約1.1兆円と、2007上期を上回る過去最高額となった。
もっとも、2022下期は金利上昇への警戒感等から取得金額は約4500億円まで減少しており、今後の動向が注目される。なお、留意事項として、同資料において行った分析結果等は、同社の注意義務の範囲内において入手可能な資料に基づいて行ったものだが、調査の時点においての判断を示したものであり、実際の取引価格等及び将来において成立する取引価格・賃料成約水準等を保証するものではないと注意している。
同調査結果は