帝国データバンクが発表した「ネット銀行との取引に関する企業の動向調査」結果(有効回答数1万203社)によると、ネット銀行と「取引している」と回答した企業は28.0%となった。その内訳は、「新型コロナ禍の前から取引している」企業は26.0%、「過去に取引をしていたが、改めて再開した」は0.4%、「新たに取引を始めた」は1.6%となった。合計すると企業の2%が新型コロナ禍を機にネット銀行を再開または開始した。
ネット銀行と取引している企業の割合を規模別にみると、「大企業」は22.8%と全体を5.2ポイント下回った。一方で、「中小企業」は29.0%、とりわけ「小規模企業」は30.6%と全体より2.6ポイント高くなった。従業員数別でみても、「1000人超」(18.6%)及び「301~1000人」(19.0%)は2割未満だった一方、「5人以下」(32.2%)、「6~20人」(30.3%)は3割超と、規模が小さい企業ほどネット銀行との取引の割合が高まっていた。
ネット銀行と取引している企業の割合を業界別にみると、「小売」は39.8%で最大となり、全体を11.8ポイント上回った。以下、「不動産」(33.8%)、「サービス」(31.4%)、「農・林・水産」(30.6%)が3割台前半で続いた。さらに主な業種でみると、「医薬品・日用雑貨品小売」(42.3%)、「飲食店」(40.7%)では4割超の企業がネット銀行と取引している。また、「人材派遣・紹介」(38.5%)や「専門商品小売」(38.0%)などは3割台後半となった。
上記のように、とりわけ個人消費関連の業種で「取引している」割合が高い傾向となっている。キャッシュレス化の進展にともない、スマホ決済を導入する小売店や飲食店などが増加しているなか、スマホ決済サービスと連携しているネット銀行を利用すると売上金振り込みに関する優遇が受けられるといった利点が、個人消費関連の業種におけるネット銀行との取引を促す一因だと考えられている。
「取引している」企業を企業年齢別にみると、スタートアップ企業などを含む「5年未満」が43.6%と4割超にのぼり、最高となった。以下、「5年以上10年未満」(38.8%)、「10年以上20年未満」(36.4%)が3割台後半で続いた。「20年以上40年未満」(30.6%)も全体を上回った一方、40年以上の企業は全体を下回る結果となった。総じてみると創業・設立年数が経つほど割合が低くなる傾向にある。
その一因として、ネット銀行口座は比較的簡単でスピーディーに開設ができるほか、創業初期の企業でも融資を受けられるところもあることがあげられる。ほかにも、ICT(情報通信技術)インフラ整備の推進が進んでいる時代に設立された企業ほどICTへの抵抗感が比較的少なく、インターネット上でのサービスのみを提供するネット銀行との取引割合が比較的高い1つの要因と考えられる。
同調査結果は