国際課税の改正、グローバル・ミニマム課税への対応

 2023年度税制改正においては、2021年10月にOECD/G20の「BEPS(税源浸食と利益移転)包摂的枠組み」において国際的に合意されたグローバル・ミニマム課税の導入に向けて、所得合算ルール(IIR)に係る法制化を行う。グローバル・ミニマム課税は、年間総収入金額が7.5億ユーロ(約1100億円)以上の多国籍企業を対象に、一定の適用除外を除く所得について各国ごとに最低税率15%以上の課税を確保する仕組みだ。

 グローバル・ミニマム課税について、所得合算ルールに係る法制化を行うため、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)及び特定基準法人税額対する地方法人税(仮称)を創設。その際、法人税による税額と地方法人税による税額が907:93の比率となるよう制度を措置するとともに、対象企業の事務手続きの簡素化に資する措置を導入する。軽課税所得ルール及び国内ミニマム課税は、2024年度改正以降の法制化を検討する。

 グローバル・ミニマム課税の導入により追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、外国子会社合算税制(CFC税制)について、(1)特定外国関係会社(ペーパーカンパニー等)の適用免除要件である租税負担割合の引下げ(30%→27%)、(2)書類添付義務の緩和等の措置を講じる。外国子会社合算税制は、国際ルール上も、グローバル・ミニマム課税と並存する仕組みとされている。

 OECD/G20では、新たな国際課税のルールについて議論が進められている。背景には、(1)現在の国際課税原則では、国内に外国企業の支店等のPE(物理的拠点)がある場合にのみ、そのPEの事業から生じた所得へ課税できるため、市場国で課税が行えない問題が顕在化、(2)低い法人税率や優遇税制で外国企業を誘致する動きが、法人税の継続的な引下げで各国の法人税収基盤が弱体化、税制面で企業間の公平な競争条件を阻害、がある。

 2015年の「BEPS最終報告書」において、経済のデジタル化に伴う課税上の課題(法人課税)について、作業を進めることに合意。OECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」(現在は約140ヵ国・地域が参加)において議論が進められ、2021年10月8日、2つの柱による解決策に合意している。第1の柱は「市場国への新たな課税権の配分」、第2の柱は「グローバル・ミニマム課税」。