東京商工リサーチが発表した後継者難倒産の状況によると、2023年2月の後継者不在に起因する「後継者難」倒産(負債1000万円以上)は29件(前年同月比▲3.3%減)で、2月としては2年ぶりに前年同月を下回った。ただ、調査を開始した2013年以降では前年同月の30件に次いで、3番目の高水準だった。負債1000万円以上の倒産に占める構成比は5.0%で、前年同月の6.5%より1.5ポイント低下した。
企業倒産は、2023年2月まで11ヵ月連続で前年同月を上回り、低水準ながら増勢を強め、歩調を合わせるように「後継者難」倒産も一進一退を繰り返しながら高水準で推移し、後継者不在は経営リスクの一つになっている。代表者が高齢なほど業績悪化をたどりやすい。これは将来投資や事業再構築、時流に合わせた弾力的な経営が難しいことも影響している。後継者不在の経営者は、雇用確保や事業継続に向けた様々な選択肢と早い決断が求められる。
要因別件数は、最多が代表者などの「死亡」の16件、次いで「体調不良」が8件と、「死亡」と「体調不良」の構成比は82.7%を占めた。このほか、「高齢」が4件だった。代表者の高齢化が進む一方、後継者の育成を先送りするケースが多い。代表者が経営から資金面まで経営全般を担うと、代表者の「死亡」や「体調不良」などの不測の事態がそのまま事業継続を難しくする経営リスクになっていることを示している。
形態別件数は、消滅型の「破産」が25件(前年同月比▲10.7%減)で最多だったが、2年ぶりに前年同月を下回った。一方、「特別清算」は2件だった。また、再建型の「民事再生法」は1件で、2月としては2013年に調査を開始した以降で初めて発生した。代表者が経営全般を担っている企業は、後継者の育成や事業承継まで手が回らない場合、代表者に不測の事態が生じると事業継続に支障をきたし、破産を選択する傾向が強い。
資本金別件数は、「1千万円以上」が15件、構成比は51.7%で、2017年(66.6%)以来、6年ぶりに半数を超えた。一方、「1千万円未満」は14件だった。また、負債額別件数は、「1億円未満」が19件、「1億円以上5億円未満」は8件、「5億円以上10億円未満」は2件で、1億円以上の構成比は34.4%と、大半は1億円未満が占めている。「10億円以上」は、5年連続で発生がなかった。
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