東京商工リサーチが発表した「預貸率調査」結果によると、国内106銀行の2022年9月中間期の預貸率(中央値)は74.2%で、前年同期より0.7ポイント上昇した。大手行を中心に貸出が伸び、預貸率を引き上げた。しかし、預金と貸出金の差を示す預貸ギャップは2008年以降で最大の358兆9430億円(前年同期比2.4%増)に広がった。預貸率は、銀行預金の運用状況を示す経営指標の一つで、預金残高に対する貸出残高の比率。
貸出金は全業態で伸ばしたが、地方銀行(前年同期比3.9%増)や第二地銀(同3.4%増)に比べ、大手行はケタ違いの同13.5%増と大きく伸ばし、顧客層の違いも格差につながった。9月中間期の貸出金は、大手行の伸び率が大きく620兆5790億円(同8.6%増)と、9月中間期では2008年以降で初めて600兆円台に乗せた。ただ、預金が979兆5221億円(同6.2%増)とさらに積み上がり、預貸ギャップは最大の358兆9430億円に拡大した。
業態別の預貸率(中央値)は、全業態で伸ばした。大手行は59.1%で、前年同期より2.9ポイント上昇。預金(前年同期比47兆1817億円増)が大きく伸びたが、貸出金(同38兆5837億円増)も増加し、地方銀行や第二地銀に比べて預貸率の上昇が大きかった。地方銀行は73.6%で、前年同期より0.6ポイント上昇。貸出金(同3.9%増)より預金(同2.9%増)の伸びは小さかったが、62行中38行で預貸率が上昇し、預貸率を押し上げた。
第二地銀は76.5%で、前年同期より1.3ポイント上昇。貸出金(前年同期比3.4%増)が預金(同2.0%増)の伸びを上回ったが、37行のうち、27行で預貸率が前年同期を上回った。預貸率が最も上昇したのは、「きらぼし銀行」の7.5ポイント上昇(81.4→88.9%)。メイン銀行化の取引推進で貸出金が前年同期比8.3%増と大幅に伸びた一方、預金が同0.8%減と前年同期を下回った。
一方、預貸率が最も低下したのは、「新生銀行」の12.8ポイント低下(76.8→64.0%)。貸出金(前年同期比15.3%増)以上に預金(同38.5%増)の伸びが大きく、預貸率を押し下げた。次いで、「スルガ銀行」5.6ポイント低下(68.3→62.7%)、「西日本シティ銀行」4.7ポイント低下(85.9→81.2%)、「琉球銀行」3.72ポイント低下、「北國銀行」3.70ポイント低下の順となっている。
大企業や優良企業などの顧客を多く抱える大手行は、設備資金の貸出が増加も、多くの中小企業はコロナ関連の資金繰り支援策で債務の過剰感が高まり、新たな資金調達が難しく、さらに、コロナ関連支援の返済開始が春からピークを迎えるが、円安やウクライナ情勢、資源高で物価上昇が続くなか、新たな資金調達が難しい中小企業は多い。コロナ禍の出口を見据えて、銀行は貸出だけでなく事業再生など企業に寄り添った対応も求められている。
同調査結果は