56%で賃上げ見込むも中小企業の厳しさが浮き彫りに

 帝国データバンクが発表した「2023年度の賃金動向に関する企業の意識調査」結果(有効回答数1万1719社)によると、本年度の企業の賃金動向は、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ある」と見込む企業は56.5%と2年連続で増加、2018年度見込み(2018年1月調査)と並び過去最高水準となった。一方、「ない」と回答した企業は17.3%と前回調査から2.2ポイント低下、調査開始以降で最も低い水準だった。

 2023年度に賃金改善が「ある」と回答した企業のその理由(複数回答)は、人手不足などによる「労働力の定着・確保」が71.9%と最多。また、今回調査で初めて尋ねた「従業員の生活を支えるため」は70.1%と7割を超え、トップに迫る水準となった。さらに、飲食料品などの値上げが続いている「物価動向」(57.5%)は前回より35.7ポイント増加しており、2015年度(23.8%)を大きく上回る過去最高水準に達した。

 他方、賃金改善が「ない」企業のその理由(複数回答)は、「自社の業績低迷」が62.2%と2022年度見込み同様に最も多くなった。また、「物価動向」(20.2%)は賃金改善を行う理由でも上位にあげられた一方で、物価上昇が賃金改善を行えない状況をもたらしていた様子もうかがえる。以下、「同業他社の賃金動向」(15.5%)、新規採用増や定年延長にともなう人件費・労務費の増加などの「人的投資の増強」(12.8%)が続く。

 賃金改善が「ある」、「ない」ともに、「物価動向」を理由に挙げる企業が2022年度見込みと比べ上昇している。帝国データバンクの調査では、企業の69.2%は多少なりとも価格転嫁できているが、全て転嫁できている企業は4.1%にとどまる。価格転嫁したいと考えている企業の販売価格への転嫁割合を示す「価格転嫁率」は39.9%と4割を下回り、これらが中小企業や小規模企業を中心に賃金改善に回す余力を奪っている可能性が示唆される。

 2022年度と比較した2023年度の自社の総人件費の変動の見通しは、「増加」を見込む企業は69.6%と前年比で2.5ポイント増加。一方、「減少」を見込む企業は5.8%(前年比▲2.9ポイント減)となった。その結果、総人件費の増加率は前年度から平均3.99%増加すると見込まれる。そのうち、従業員の給与は平均2.10%、賞与は平均5.62%それぞれ増加、さらに各種手当などを含む福利厚生費も平均3.55%増加すると試算される。

 同調査結果は

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p230205.pdf