貯蓄から投資への流れを促すNISA制度の抜本拡充

 2023年度税制改正の目玉は、岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」を実現するための柱となる少額投資非課税制度(NISA)の抜本的拡充となる。与党の税制改正大綱によると、NISAの年間の投資枠をつみたて型について現行の40万円の3倍の120万円に、一般型を同120万円の2倍の240万円に拡大する。合計で年360万円の投資枠を設け、貯蓄から投資の流れを促す。制度も恒久化され、非課税投資期間も無期限となる。

 NISAは、金融商品の売却益などが一定の範囲で非課税となる制度で、英国の制度を参考に2014年に導入されたもの。現在、国内外の上場株に投資する「一般NISA」、投資信託に限定した「つみたてNISA」、18歳以下の未成年者利用できる「ジュニアNISA」の3種類がある。このうち、「ジュニアNISA」は2023年に終了し、「一般NISA」は2023年に終了し、2024年から新制度に移行し5年延長することになっている。

 2023年度税制改正では、国内外の上場株に幅広く投資できる一般NISAはその機能を引き継ぐ「成長投資枠(仮称)」に衣替えする。2024年に制度を恒久化するとともに、配当金や分配金に税金がかからない非課税保有期間(現行:一般NISA5年間、つみたてNISA20年間)を無期限化する。ただし、生涯の投資上限を1800万円とし、うち成長投資枠を1200万円に設定する。つみたてNISAと成長枠投資は併用可能となる。

そのほか、2023年で制度を終えるジュニアNISAの受け皿とするため、つみたてNISAの対象年齢(現行18歳以上)を未成年者まで拡大する案があったが、見送られ、口座開設対象者が18歳以上の成人限定の制度となる。一方、資産形成の税優遇は恩恵が偏らないことも重要だ。単に制度を拡充するだけでは、富裕層だけが恩恵を享受することになりかねない。富裕層に恩恵が偏るのを防ぐために生涯投資枠を設けるわけだ。

 政府は、NISAの抜本的拡充で、投資額を今後5年で合計56兆円に倍増させる目標を掲げ、口座数も2倍の3400万口座を目指す。今後の資産形成の手段として期待されるNISAだが、現在、NISAを利用する個人の7割は年収500万円未満、また、利用者の過半数は世帯保有金融資産が1000万円未満で、NISA制度は中間層を含めた幅広い層の資産形成に活用されている。抜本改正でさらなる活用が注目されるところだ。