海外取引法人調査で1611億円の申告漏れ所得を把握

 企業等の事業、投資活動のグローバル化が進展するなか、海外取引を行っている法人の中には、海外の取引先への手数料を水増し計上するなどの不正計算を行うものが見受けられる。国税庁は、このような海外取引法人等に対し、国外送金等調書や租税条約等に基づく情報交換制度を積極的に活用するなど、深度ある調査に取り組んでいる。2021事務年度は、海外取引法人等に係る実地調査を6676件(前年度比46.1%増)実施した。

 新型コロナウイルス感染症の影響が緩和されてきて調査件数も増加したが、この結果、海外取引等に係る非違があったものが1752件(前年度比23.0%増)把握された。非違があった件数は前事務年度に比べて増加し、海外取引等に係る申告漏れ所得金額も5.3%増加して1611億円となった。非違があったうちの219件(同18.4%増)は不正計算があったもので、不正所得金額は108億円(同16.4%)だった。

 調査事例では、現地の登記情報等を端緒に外国子会社合算制度の適用誤りを把握したものがある。A社は、軽課税国であるX国に100%出資している外国子会社を有しているにもかかわらず、その外国子会社について申告を行っていなかった。国税庁は、現地の登記情報等から外国子会社の実態を確認し、その外国子会社について外国子会社合算制度を適用すべきところ、適用が漏れていた事実を把握している。

 また、外国法人に対する借入金に係る利子の源泉徴収漏れを把握した事例がある。B社は、Y国の子会社からの借入金に係る利子について、その借入金の元本に繰り入れており、実際に金銭の支払いをしていなかったことから、源泉徴収は不要と考えて行っていなかった。現実に金銭が交付されていなかったとしても、支払債務が消滅する一切の行為が「支払」に該当するため、注意が必要だ。