2021事務年度の法人税調査、申告漏れ6028億円把握

 国税庁が公表した法人税等の調査事績によると、今年6月までの1年間(2021事務年度)に、あらゆる資料情報と提出された申告書等の分析・検討を行った結果、大口・悪質な不正計算等が想定される法人など、調査必要度の高い法人4万1千件(前事務年度比63.2%増)を実地調査した。その結果、申告漏れ所得金額は6028億円(同14.0%増)、法人税と消費税の追徴税額は2307億円(同19.2%増)だった。

申告内容に誤り等が想定される納税者に対しては、“簡易な接触”を活用し、自発的な申告内容等の見直し要請を6万7千件(前事務年度比▲2.0%)実施。その結果、申告漏れ所得金額は88億円(同16.6%増)、追徴税額は104億円(同67.5%増)だった。簡易な接触とは、税務署において書面や電話による連絡や来署依頼による面接により、納税者に対して自発的な申告内容の見直しなどを要請するもの。

 新型コロナウイルスの影響を受けつつも、調査件数、申告漏れ所得金額、追徴税額が増加するなか、実地調査1件当たりの追徴税額は570万1千円(前年度比▲27.0%)となった。また、源泉所得税については、実地調査の件数は4万8千件で、源泉所得税等の非違があった件数は1万5千件、追徴税額は228億円。簡易な接触の件数は12万9千件で、追徴税額は78億円となっている。

 不正を業種別にみると、不正発見割合の高い10業種では、「その他の道路貨物運送」が32.8%で前年ランク外からワースト1位になった。以下、「医療保険」(31.2%)、「職別土木建築工事」(29.6%)、「土木工事」(28.7%)、「その他の飲食」(28.4%)、「化粧品小売」(28.0%)、「美容」(28.0%)、「機械修理」(27.9%)の順で続く。前年まで19年連続のワースト1位だったワースト業種の常連の「バー・クラブ」はランク外となった。

 また、1件あたりの不正所得金額が大きい10業種では、1位は前年5位の「情報サービス、興信所」の7289万円、2位は「自動車・同部品卸」(6472万円)、3位は「鉄鋼製造」(6370万円)、4位は「運輸附帯サービス」(5538万円)、5位は「その他のサービス」(5296万円)、6位は「建売、土地売買」(5010万円)、7位は「その他の金属製品製造」(4274万円)、8位は「化粧品小売」(3552万円)と続く。

 なお、国税庁では、調査必要度の高い納税者に対しては実地調査を行い、その他の納税者に対しては、是正を目的とした実地調査以外の手法を用いて接触することにより、納税者の税務コンプライアンスの維持・向上を図っている。その結果、納税者に対する5年間での接触率は、18.5%(法人税・消費税、2021事務年度は3.3%)、33.6%(源泉所得税、同5.0%)となっている。

 同調査事績の概要はhttps://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/hojin_chosa/pdf/01.pdf