帝国データバンクが発表した「インフレ手当に関する企業の実態アンケート調査」結果(有効回答数1248社)によると、物価高騰をきっかけに従業員に支給する特別手当(インフレ手当)の実施・検討状況は、「支給した」企業は6.6%となった。また「支給を予定」は5.7%、「支給していないが、検討中」は14.1%となり、全体の4社に1社(26.4%)がインフレ手当に取り組んでいることが分かった。他方、「支給する予定はない」は63.7%。
既に支給した企業からは「物価の高騰が続き、社員やパート社員の生活が困窮しないように一時金を全従業員に支給」(事業サービス)と、記録的な円安水準や原材料価格の高騰を背景に、食料品などの値上げラッシュが続くなか、実質賃金の減少を補うために支給するとの声が聞かれた。また「物価高騰のなかで少しでも社員のモチベーションアップにつながれば」(工業用薬品卸売)といった、従業員のモチベーションアップの狙いもうかがえる。
インフレ手当の支給方法及び支給額(予定・検討中の企業を含む、複数回答)については、インフレ手当に取り組む企業のうち「一時金」と回答した企業は66.6%、「月額手当」と回答した企業は36.2%となった。企業からは、「月額手当にしてしまうと、手当を下げねばならない時にインパクトが大きくなるので、賞与に追加して今をしのいでもらいたい」(鉄鋼卸売)との声が聞かれた。
そのうち「一時金」の支給額は、「1万円~3万円未満」が27.9%で最多、「3万円~5万円未満」及び「5万円~10万円未満」が21.9%。「10万円~15万円未満」は9.1%、「15万円以上」は7.3%と、10 万円以上を支給する企業は15%超にのぼった。「一時金」の平均支給額は約5万3700円となった。また、「月額手当」の支給額は、「3千円~5千円未満」と「5千円~1万円未満」が30.3%で最も多く、平均支給額は約6500円だった。
帝国データバンクが実施した2022年度賃金動向に関する企業の意識調査では、物価動向などを理由に5割を超える企業で賃金改善を見込んでいた一方で、コスト上昇分をすべて販売価格に転嫁できず収益が低迷していることが、ベースアップや手当支給に踏み切れない1つの要因となっている。このため政府は、企業が価格転嫁しやすい環境の整備や賃上げを促す支援策の実行などが求められる。
同調査結果は