帝国データバンクが9月に実施した「企業の価格転嫁の動向アンケート」では、コストの上昇分を販売価格やサービス料金に「多少なりとも転嫁できている」企業は70.6%だったのに対し、「全く価格転嫁できていない」企業は18.1%となった。物価高が続く状況下で、企業は取引先からの理解が得られないことや顧客離れを懸念し、価格転嫁に結びつけられていないのが現状。物価高倒産は、今後もさらなる増加傾向で推移していきそうだ。
帝国データバンクが発表した「物価高倒産動向調査」結果によると、10月の物価高倒産は41件判明し、月間最多だった9月(35件)をさらに上回り、4ヵ月連続で月間最多を更新した。10月には、今年最多となる6700品目の飲食料品が一斉に値上げされたほか、大手電力・ガス会社が利用料金を引き上げるなどエネルギーコストも上昇した。円安による急激な輸入コスト負担の増加も加わり、多方面に物価高の影響が広がっている。
2022年10月に発生した41件を業種別にみると、「製造業」(12件)がトップとなり、なかでも「飲食料品製造」(7件)が最も多かった。以下、「小売業」(9件)、「運輸・通信業」(8件)、「建設業」と「卸売業」(ともに5件)が続いている。業種詳細別でも、「運輸業」(8件)や「飲食料品小売」(5件)が多く、燃料高や食品の価格高騰の影響を受けた業種が多かった。
規模別にみると、「1億~5億円未満」が20件でトップ。次いで、「1億~5000万円未満」(10件)、「1000万円~5000万円未満」(8件)と、負債額中規模の倒産が目立つ。2022年(1~10月)に発生した226件を業種別にみると、「運輸・通信業」(51件)が最も多く、全体の約23%を占めた。以下、「建設業」(49件)、「製造業」(44件)、「卸売業」(34件)、「小売業」(25件)が続いた。
10月の全国企業倒産件数は594件と、低水準ながら6ヵ月連続で増加。中小・零細企業の多くは、コロナ禍で経営体力を消耗した末に倒産に至ったケースが多く、足元の物価高は「最後の一押し」要因の一つとし懸念される。10月末に発表された政府の総合経済対策は歓迎される一方、足元の物価高に対する即効性は不透明な部分がある。資金需要が例年高まり、かつ企業倒産が相次ぐ年末にかけて、物価高倒産はさらに増加していく可能性がある。
同調査結果は