国税の一時納付が困難な場合は換価・納税の猶予を!

 国税が期限納付されない場合には延滞税が課され、また、税務署から督促状が送付されても未納付のときには、財産の差押えなどの滞納処分を受ける場合がある。そこで、国税を一時に納付することが困難な理由がある場合には、財産の換価(売却)や差押えなどの猶予(換価の猶予、納税の猶予)が認められる場合がある。猶予が認められると、財産の換価(売却)や差押えなどが猶予されるほか、猶予期間中の延滞税の全部又は一部が免除される。

 換価の猶予は、(1)国税を一時に納付すると、事業継続や生活の維持を困難にするおそれがあると認められる、(2)納税について誠実な意思を有すると認められる、(3)換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がない、(4)納付すべき国税の納期限から6ヵ月以内に申請書が提出されている、(5)原則、担保の提供がある、との全てに該当するときは、原則、1年以内の期間に限り、「換価の猶予」が認められる場合がある。

 また、次の(1)から(4)までの要件全てに該当するときは、原則、1年以内の期間に限り、「納税の猶予」が認められる場合がある。まず(1)は、(A)財産について、災害や盗難にあった、(B)納税者や家族が病気や負傷した、(C)事業を廃業・休業した、(D)事業が著しい損失を受けた、(E)上記の(A)から(D)に類する事実があった、(F)本来の期限から1年以上経過後に、修正申告などで納付税額が確定した、のいずれかに該当する事実があること。

 次に、(2)猶予該当事実に基づき、納税者がその納付すべき国税を一時に納付することができないと認められること、(3)申請書が提出されていること(上記(1)Fの場合は納期限までの提出)、(4)原則として、担保の提供があること、の要件全てに該当する必要がある。また、これらの換価の猶予や納税の猶予の申請をする場合は、原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保を提供する必要がある。

 ただし、(1)猶予を受ける金額が100万円以下である場合、(2)猶予を受ける期間が3ヵ月以内である場合、(3)担保として提供することができる種類の財産がないといった事情がある場合、のいずれかに該当する場合には、担保を提供する必要はない。なお、猶予を受けることができる期間は、1年の範囲内で、申請者の財産や収支の状況に応じて、最も早く国税を完納することができると認められる期間に限られる。

 猶予を受けた国税は、原則として猶予期間中の各月に分割して納付する必要がある。さらに、猶予期間内に完納することができないやむを得ない理由があると認められる場合は、当初の猶予期間が終了する前に所轄の税務署に申請することにより、当初の猶予期間と合わせて最長2年以内の範囲で猶予期間の延長が認められることがある。国税を納期限までに納付できない場合は、早めに所轄の税務署の徴収担当に相談することをお勧めする。