原油や燃料、原材料等の「物価高」の影響を受けた倒産が相次いでいる。経営体力が限界に達した中小・零細企業を中心に、物価高が“最後の追い打ち”となり、事業継続断念に追い込まれる「物価高倒産」が、年末にかけてさらに増えていきそうだ。帝国データバンクが発表した「物価高倒産の動向調査」結果によると、2022年1~8月の「物価高倒産」は累計150件となったことが分かった。
この150件は、調査開始の2018年以降で最多だった2021年(138件)を8月時点で上回り、年間最多を早くも更新した。8月単月では34件判明し、月間最多だった7月(31件)をさらに上回り、2ヵ月連続で最多を更新。前年同月(13件)の約2.6倍に急増。これらの数字は、個別の取材の中で倒産理由が判明したケースのみ集計しており、氷山の一角に過ぎない。実際にはさらに多方面に、物価高の影響が広がっている可能性が高い。
2022年に発生した150件を業種別にみると、「運輸業」(42件)がトップで、全体の約3割を占めた。以下、「建設業」(34件)、「卸売業」、「製造業」(各23件)が続いた。また、 業種詳細別にみると、「運輸業」(42件)がトップとなり、次いで「総合工事」(19件)。以下、「飲食料品製造」(13件)、「飲食料品卸売」、「職別工事」(各10件)、「飲食料品小売」(8件)が続いた。製造、卸売、小売を合わせた「食品」関連が31件に達した。
8月の全国企業倒産件数は4ヵ月連続で増加となり、長らく続いた減少基調からの“底打ち感”が鮮明となってきた。中小・零細企業の多くは、すでにコロナ禍で経営体力を消耗している。足下の燃料、原材料、電気代、物流コストの高止まりによる収益悪化が、新たな倒産の引き金になりかねない。各業界において、価格転嫁を目的とした「値上げ」や「再値上げ」の動きも広がりつつある。
しかし、企業にとっては十分な転嫁ができるとは限らず、価格を据え置く他社との競争激化による売上減少といったリスクもはらみ、先行きは楽観視できない。電気代の上昇や円安の進行も加わり、物価高の影響はむしろこれから本格化する。帝国データバンクは「資金需要が例年高まり、企業倒産が相次ぐ年末にかけて、物価高倒産はさらに増えるおそれがある」とコメントしている。
同調査結果は↓