東京商工リサーチが8月上旬に実施した「債務の過剰感に関するアンケート調査」結果(有効回答数5978社)によると、負債比率や有利子負債比率など財務分析の定量数値に限定せず、債務の過剰感を聞いたところ、「コロナ前から過剰感」は11.6%、「コロナ後に過剰感」は17.8%で、計29.5%が「過剰債務」と回答した。「過剰債務」と回答した企業は、前回調査(2022年4月)の32.0%から2.5ポイント改善した。
ただ、「道路旅客運送業」の85.0%、「宿泊業」の81.2%、「飲食店」の77.1%、「娯楽業」の68.7%など、コロナ禍が直撃した対面型サービス業ほど債務の過剰感の解消が遅れている。規模別で、「過剰債務」との回答は大企業が15.6%に対し、中小企業は31.7%と、2倍の差が開いた。「過剰感があったが、コロナ後に解消」は、業績回復の遅れを反映し、大企業が1.7%、中小企業が2.3%と、いずれも僅かにとどまった。
「コロナ前から過剰感」及び「コロナ後に過剰感」と回答した過剰債務を抱える企業を業種別で分析したところ、過剰債務率の最高は、「道路旅客運送業」で85.0%。以下、「宿泊業」の81.2%、「飲食店」の77.1%、「娯楽業」の68.7%、旅行や葬儀、結婚式場などの「その他の生活関連サービス業」の65.7%と続く。対面型サービス業が上位を占め、人流抑制や三密回避の定着が経営に深刻な傷跡を残していることが改めて浮き彫りとなった。
過剰債務を抱えていると回答した企業の事業再構築への取組みは、「事業再構築の意向はない」は29.9%。一方、過剰債務が足かせで「取り組むことができない」は12.5%、「取組み規模を縮小した」は20.0%だった。過剰債務を抱える企業のうち、32.6%が事業再構築にマイナスの影響を訴えている。規模別では、過剰債務が事業再構築の足かせになっている企業は、大企業で21.4%、中小企業で33.4%だった。
「過剰債務」を抱える中小企業が依然として3割を超えていることが今回の調査で分かった。政府はコロナ禍初期より、実質無利子・無担保(ゼロ・ゼロ)融資などの貸付型、新型コロナ特例リスケジュールなどのリスケ型を中心とした強力な資金繰り支援で、倒産を抑制してきたが、こうした支援がスタートしてから2年以上が経過し、債務の返済が始まっている企業も増えるなど、緊急避難的に実施した支援の「副反応」への対処が急務となる。
同調査結果は↓