帝国データバンクが発表した「円安に関する企業の影響に関するアンケート調査」結果(有効回答数1763社)によると、現在の円安傾向による自社の企業活動への影響(複数回答)は、仕入れ価格上昇、燃料費や光熱費上昇など「コストの増加」が77.7%と、約8割に達したことが分かった。業界別にみると、「卸売」が85.1%で最も高く、次いで「製造」(83.7%)、「運輸・倉庫」(83.2%)、「小売」(81.2%)が8割を超えた。
とりわけ、「卸売」のなかでアパレル製品を取り扱う「繊維・繊維製品・服飾品卸売」(93.8%)では9割超の企業でコスト増の負担を実感している。企業からも「急激な円安進行のため、販売先への価格転嫁が難しく仕入れ先とのコスト調整が可能かどうか交渉中」(男子服卸売)や「大手通販に衣料を卸しているが、価格転嫁が全く進まない」(婦人・子供服卸売)といった厳しい声が聞かれた。
「コスト増加」の影響以外では、消費者による「国内における買い控え」を挙げる企業や「販売価格への転嫁が進んだ」(ともに12.0%)とする企業も1割程度ある。一方、プラスの影響として、「大企業」を中心に「為替差益が発生」(5.7%)が挙げられた。また、「円安により、今後国内での販売量の大幅減少から、今秋をもって会社を解散する」(建築材料卸)といった声にあるように企業の0.6%で「事業の整理、撤退」との回答があった。
急速に進んだ円安に対して直接・間接問わずコスト増加が負担と捉えている企業は、約8割に達した。業界間で影響の濃淡がみられており、仕入れ先の値上げの影響を大きく受ける「卸売」や燃料費高騰が響く「運輸・倉庫」などでは特に悪影響となっていた。企業からのコメントにもあるように取引先からの理解を得ることが難しい点や仕入れ価格の上昇分すべてを販売価格へ転嫁できていない点など課題が多い。
2022年上半期、多くの企業にとって企業活動・業績へ悪影響を及ぼしていた昨今の円安だが、今後も先行き不透明感は拭えず、直接・間接問わずコストの上昇はじめ、企業を取り巻く環境には厳しさが続くとみられている。ここに来て、原油や燃料、原材料等の「物価高」による倒産が相次ぐなど、顕在化する企業収益圧迫による影響は注視していく必要があるようだ。
同調査結果は↓https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p220806.html