新型コロナウイルス感染症拡大によるサプライチェーンの混乱で半導体不足の影響も甚大となり、直近はロシア・ウクライナ情勢の長期化により企業の経済活動に対するリスクが顕在化している。政府は2021年11月に「経済安全保障法制に関する有識者会議」を設置し議論を重ね、5月11日に経済安全保障推進法(経済安保法)が成立した。そこで、帝国データバンクは「経済安全保障に対する企業の意識調査」を実施した。
調査結果(有効回答数1万1605社)によると、経済安保法で取り組むべき分野として「サプライチェーン(SC)の強靱化」、「基幹インフラの安全性・信頼性の確保」、「官民技術協力」、「特許出願の非公開化」を提示して、自社の企業活動にとって最も関係があると思う項目はどれかを尋ねたところ、「基幹インフラの安全性・信頼性の確保」(20.9%)がトップとなり、次いで「SCの強靱化」(18.0%)が続いた。
「官民技術協力」(4.9%)、「特許出願の非公開化」(1.5%)はいずれも5%未満となり、自社に関係するとみている企業は少なかった。全体の半分以上である 54.8%が「関係はないと思う」(24.6%)、「分からない」(30.2%)と認識していた。同法が5月11日に成立してから施行まで半年(または1年)が予定されており、具体的な内容が示されていないなか、多くの企業が自社と経済安保法の関係性を図りかねている結果となった。
「基幹インフラの安全性・信頼性の確保」あるいは「SCの強靱化」と回答した企業を規模別にみると、いずれも規模の大きい企業ほど、経済安保が自社の経済活動に関係すると考えている割合が高かった。業界別では、「基幹インフラの安全性・信頼性の確保」の割合が最も高かったのは、『金融』の28.4%。以下、『サービス』(26.1%)、『建設』(25.7%)、『運輸・倉庫』(22.4%)が 20%を超えていた。
経済安保法の自社への影響とBCPの策定状況との関係をみると、BCPの策定に前向き(「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」)な企業では、「SCの強靱化」や「基幹インフラの安全性・信頼性の確保」をあげた企業の割合がいずれも20%を超えた。BCP策定への取組み状況と経済安保の関係では、特に「SCの強靱化」、「基幹インフラの安全性・信頼性の確保」において顕著な特徴が表れる結果となった。
同調査結果は↓https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220702.pdf