「退職所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等は

 退職所得の源泉徴収票は、退職後1ヵ月以内に交付する。転職先の年末調整や本人の確定申告時に必要となるからだ。「退職所得の源泉徴収票」は、受給者交付用と税務署提出用に加え、市区町村に提出するための「特別徴収票」を兼ねていることから、帳票の名称は「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」となっている。提出義務者は、法人の役員に対して退職手当、一時恩給その他これらの性質を有する給与の支払者だ。

 ただし、死亡退職により退職手当等を支払った場合は、相続税法の規定による「退職手当金等受給者別支払調書」を提出することになるので、この場合には「退職所得の源泉徴収票等」を提出する必要はない。また、退職手当等の支払者が税務署に提出する2016年1月1日以後の支払に係る退職所得の源泉徴収票等には、退職手当等の支払を受ける者等のマイナンバーまたは法人番号を記載する必要がある。

 一方で、受給者に交付する退職所得の源泉徴収票等には、マイナンバー及び法人番号を記載しないので、注意が必要となる。退職所得の源泉徴収票等の提出範囲は、退職手当等を支払ったすべての者について作成し交付することとされているが、税務署と市区町村へ提出しなければならないのは、受給者が法人の役員である場合に限られている。この場合の役員には相談役、顧問その他これらに類する者が含まれる。

 この「提出範囲」に該当する退職所得の源泉徴収票等は、原則として退職後1ヵ月以内に支払者の所轄税務署及び支払った年の1月1日現在の受給者の住所地の市区町村に提出しなければならない(その年中に退職した受給者分を取りまとめて翌年の1月31日までに提出しても差し支えない)。なお、あらかじめ受給者の承諾を得る等一定の要件の下、書面交付に代えて、退職所得の源泉徴収票等に記載すべき事項を電磁的方法で提供ができる。

 ただし、その場合でも、受給者から請求があるときは、書面により交付しなければならない。また、退職所得の源泉徴収票等の税務署への提出枚数は1枚となっているが、租税条約等により日本と自動的情報交換を行うことができる各国等に住所がある者の分については、同じものを2枚提出することとなっている。