東京商工リサーチがこのほど発表した「全国宿泊業の業績調査」結果によると、国内の宿泊業4983社の2021年決算(1月~12月期)の売上高合計は2兆1813億8600万円で、2020年(3兆3509億6100万円)と比べ▲34.9%減(1兆1695億7500万円減)と3割以上の大幅減収となった。コロナ前の2019年(4兆27億7600万円)と比べると約半分(45.5%)が消失したことがわかった。
2021年決算で最終損益が判明した1568社の損益合計は、4808億5500万円の大幅赤字だった。赤字企業率はコロナ禍以降、急激に増加し、コロナ前の2019年の23.7%から2020年は51.5%と半数以上の企業が赤字に転落。2021年はさらに深刻さを増し、約6割(58.0%)が最終赤字だった。コロナ禍でインバウンド需要が消失し、国内も移動制限で遠出が減り、赤字に陥った宿泊業者が増えた。
宿泊事業者4983社のうち、売上高1億円未満の小・零細事業者は2968社(構成比59.5%)と約6割を占めた。一方で、売上高10億円以上は328社(同6.5%)にとどまった。宿泊業の多くは中小・零細事業者で、付加価値の創造力が乏しく、売上減が収益を直撃する構図から抜け出せていない。さらに今後、資源高や原材料コスト高、人件費上昇が経営悪化に直結することが危惧される。
2022年春以降、全国に発令されていたまん延防止等重点措置が解除され、6月に入り、外国人旅行者の入国規制が緩和され、成田や羽田など一部の空港で観光目的での入国の受け入れが再開された。航空各社も国際線を増便し、7月以降は新千歳や仙台などでも、順次、外国からの旅行者受け入れが始まる。コロナの感染状況にもよるが、夏場以降の観光シーズンは訪日客の増加に加え、各地で観光産業や地域の経済活性化が期待される。
一方で、急な客足の回復は隠れていた人手不足が顕在化の上、資源高や食材等の高騰で宿泊事業者の経営に大きな負担となる可能性もある。労働集約型の代表格の一つである宿泊業は、人の手を必要とする業務も多い。中小・零細の宿泊事業者が労働力不足を補うには手元の資金の充実が課題となる。アフターコロナに向け、客足回復に伴う経営負担の軽減には今後、宿泊事業者と求職者のマッチングなど次のステップを見据えた支援策も急がれる。
同調査結果は↓https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220630_02.html