21年新設法人数、苦境の飲食店が過去最多の不思議

 表題は東京商工リサーチがこのほど発表したレポートだ。それによると、コロナ禍で多くの飲食店が苦境に陥るなか、2021年の飲食店の新設法人数(個人企業除く)は7810社と2012年以降、最多を記録した。新設された法人を確認すると一部は店舗がオープンしていることが確認されたが、多くは設立されたものの、コロナ禍の動向を様子見しているようだ。飲食業界は、徐々にコロナ前の活況を取り戻しつつある。

 だが、税負担や食材、光熱費、人件費などのコスト増に加え、過去最多の新規参入組との熾烈な競争が待ち受けている。都内の和食店の店主が訝しがる。コロナ禍の最中にオープンした近くの飲食店がいつまで経っても営業しない。「“休業中”との張り紙が、最近“テナント募集”に変わった」という。店主は、新規オープンしても、営業制限で固定客の確保が難しく、持続化給付金などの補助金で休業したままの店舗が多かったのではと推測する。

 未曽有の経営環境下だった2021年に、飲食店は過去最多の7810社誕生した。新型コロナの感染が広がった2020年は6825社で、コロナ前の2019年から▲10.5%減と大幅に減少。2021年はその反動もあるとみられるが、アフターコロナを見据えた法人設立が重なり、これまで最多だった2019年の7634件を上回った。今回の調査は、2021年設立の法人を対象に、商業登記の事業目的の第一項目に飲食店に関連する記載があるものを集計した。

 このため、「飲食店経営」として設立した後に、目的を別の業種に変更するケースもあり、すべてが飲食店の営業許可を取得するとは限らない。飲食店の新設法人は、バーチャルオフィスを本店登記地とするケースが目立つ。設立時の登記地は仮住所で、店舗開設を準備している可能性もある。とはいえ、九州を中心に一人の代表者が14社設立したり、大阪府では同じ住所で飲食店が15社も設立されている。

 こうした新設法人がどのような事業を手掛けるのか。別の意味で興味が湧く。コロナ関連の資金繰り支援策で飲食店の2021年の倒産は609件(前年比▲21.8%減)と2割強減った。だが、テイクアウトやデリバリー、大人数の宴会需要の低迷など、新しい生活様式の浸透で競争は厳しさを増す。また、食材や光熱費、人件費の高騰のほか、協力金などの収入で税金が上がる可能性もある。これから新旧入り乱れた生き残り競争が繰り広げられそうだ。