東京商工リサーチが発表した「後継者難倒産の状況調査」結果によると、2022年5月の「後継者難」倒産は40件(前年同月比11.1%増)発生し、5月では3年連続で前年同月を上回った。コロナ禍の資金繰り支援効果が薄れるなか、企業倒産は2ヵ月連続で前年同月を上回り、底打ちの兆しが見えてきた。そうしたなか、代表者の高齢化や後継者がいないことに起因した「後継者難」倒産の構成比は高水準をたどっている。
後継者の不在が、企業のリスクとして顕在化している。金融機関では代表者の高齢化に加えて、後継者(候補)の有無が融資の際の選別要因にもなっており、設備資金など長期資金の貸出へのハードルを高めている。また、代表者の病気や死亡が、事業継続を断念する要因にもなっている。コロナ禍で経営環境が大きく変化した。こうした環境下では状況に即した柔軟な経営が求められている。
要因別では、最多が代表者などの「死亡」の23件(前年同月比27.7%増)。「後継者難」倒産に占める構成比は57.5%で、前年同月より7.5ポイント上昇。「体調不良」は9件(同▲18.1%)だった。代表者などの「死亡」と「体調不良」は合計32件(同10.3%増)で、5月度では過去最多となった。このほか、「高齢」が5件だった。代表者の高齢化が進むなかで、代表者などの「死亡」や「体調不良」が、事業運営上の大きなリスクとなっている。
産業別は、10産業のうち、建設業、製造業、卸売業、情報通信業、サービス業他の5産業が前年同月を上回った。減少は、農・林・漁・鉱業、小売業、不動産業、運輸業の4産業だった。最多は、「サービス業他」の15件(前年同月比50.0%増)で、5月度としては2年連続で前年同月を上回り、調査を開始した2013年以降で最多となった。次いで、「建設業」が9件(同28.5%増)で、5月度としては3年連続で前年同月を上回り、最多を記録した。
形態別は、最多が「破産」の34件(前年同月比±0.0%、構成比85.0%)。また、「特別清算」は2件(前年同月1件)で、消滅型の倒産が36件(同35件)と9割を占めた。再建型の「会社更生法」、「民事再生法」は、5月としては2013年以降、発生していない。業績回復が遅れるなかで、後継者の育成や事業承継の準備は後回しとなっていて、代表者に不測の事態が生じた場合、事業継続が困難となるため、大半が「破産」を選択している。
同調査結果は↓https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220610_02.html