コロナ禍で暗躍する「パクリ屋」の手口~TSR取材

「やられた……」。東京商工リサーチ(TSR)の取材に応じた経営者は肩を落としながら憤った。初回の取引は約定通りに支払われた。コールセンターの電話応対も親切だったという。「ネット販売が好調なので、取引額を増やして欲しい」と打診を受けた。増額後の代金が支払われることはなく、最終的には1000万円以上の被害となった。コロナ禍で苦しい隙をつかれた。社会不安や先行きの不透明感は、経営者の目を曇らせる舞台装置だ。

「取り込み詐欺」、いわゆるパクリ屋は、古典的な経済犯罪だ。最初は小口取引を重ねて期日通りに支払い、相手を信用させ取引量を増やす。やがて大量の商品を仕入れ、経営悪化を理由に債務を踏み倒す。手口は単純かつアナログだが、令和の時代でも減らないのは相応のうまみがあるからだ。一般企業を装い、大企業と見違えるほどの看板や名刺、ホームページを作る。信用調査への対策として、優良企業ばりの「ニセ決算書」も準備する。

 もともと払うつもりがなかったのか、払いたくてもお金がないのか。結果は同じ倒産でも、倒産を犯罪に問うことは難しい。パクリ屋は、そこを突いてくる。「コロナ禍での業況悪化で……」は打ってつけの理由だ。よほどの証拠がない限り、詐欺での立件は難しく、運よく犯人が逮捕されてもすでに資金は還流され、回収は期待できない。かつてのパクリ屋は、突然姿を消す「夜逃げ型」が大半だった。

最近は通常の倒産を装い、事業停止と同時に弁護士が債務整理を引き受ける「弁護士受任型」が増えてきた。弁護士が表に立って当人は雲隠れする。そのうち、「債務者と連絡がつかない」などの理由で、弁護士が債務整理を辞任し、うやむやのまま終わる。パクリ屋と思しき企業の債務整理に何度も同じ弁護士が登場することがある。経緯を聞いても「詐欺行為は関知していない」の一点張りだが、審査担当者や調査員はチェックを欠かさない。

商業登記簿を取得し、代表交代や移転歴を確認するのはパクリ屋チェックでは定石だ。この際、移転歴や会社分割があれば、閉鎖登記などの履歴まで追いかけることも心がけたい。 登記内容はパクリ屋チェックの手がかりにもなる。常習性があり、いったん逃げても、ほとぼりが冷めるとまた別の場所で活動を始める。役員、社名、住所などが重複する可能性が高い。このため、信用調査会社では長年に渡り関連データを蓄積している。

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